HAPPY PRETTY BIRTHDAY ! !


     
 さて、4月17日。
 この日は極一部の人々にとってはとてつもなく大事な一日であった。

 愛しくも愛くるしいブロンド&グリーン・アイのとある英国人俳優がこの世に生を受け、46年目の記念すべき日なのである。

 要するに誕生日という訳なのだが、当の本人は故郷の英国ではなく撮影でアメリカに来ていた。先日英国に戻っていた際に、家族とは早めの誕生日を済ませていたのである。

 前日、16日の夜。その日の撮影が終わり、ショーンは部屋に戻ろうとホテルのロビーを歩いていた。
 するとショーンと入れ違う様に、今回の共演者とその恋人がロビーに表れた。
「ハイ!ショーン!!」
 手を挙げて歩み寄ってきたのはブロンド美人(女性)の代名詞、オスカー俳優でもあるシャリーズ・セロンとその恋人スチュワート・タウンゼント。
「やあ、シャリー、それにスチュワート!こっちに来てたのか。」
「久しぶりだね、ショーン。僕のお姫様がエスコートしてくれって言うもんだから。」
「せっかくの週末だもの。珍しく休みが合ったから呼んじゃったわ。」
 そう言うとお互いに眼を合わせて笑う2人。仕事や記事などで見かける顔とはぜんぜん違う。二人ともとても幸せそうだ。
「そうそう、ショーン。あなた明日が誕生日なのよね?」
「ん?ああ、そうだけど。どうして知ってるんだい?」
「今日、スタッフの誰かが言ってたのを聞いたのよ。あ、もう12時まわってるじゃない。オメデトウ、ショーン!」
 そう言うとセロンはショーンにハグをして、頬に口付けた。
「ブロンド美人が2人も並ぶと眩しいね。」
「まあ、スチューったら。」
「眩しいどころか、私は彼女の引き立て役さ。」
「美人は2人いた方が輝きが増すってもんだよ。おめでとう、ショーン。」
 そう言ってハグを交わす。
「それじゃあ、また明日。」
「撮影中、彼女をよろしく。」
「ああ。2人とも楽しんで。」
 2人は寄り添いながらホテルを出て行く。その後ろ姿を見ながらショーンは短くため息をついた。

 あの2人を見たからだろうか。それとも誕生日だからだろうか。
 年を取ることに今更特に思うところは無い。ただ、こういう特別な日をいかにして過ごす、というのは今も昔も大切な事だと思っている。俳優、という職業なら、尚更時間というものに振り回されがちだから。
 大切な時間を、大切な人と過ごす。・・・簡単なようだが、自分にとってはとても難しい問題だ。

 今ならわかる。
 
 もっと昔に理解っていたら、自分の人生は変っていた事だろう。
 いや、何を今更。過ぎてしまった事はしょうがない。今更悔やんでも遅いのだ。
「・・・平気なフリして、実は寂しいのかな・・・」
 そんな事を思いながらショーンはカードキーを挿し、部屋の扉を開ける。


「HAPPY BIRTHDAY!! SEAN!!」

「うわ!!!」
 いきなり声が聞こえたかと思うと、クラッカーが派手な音を立てて飛び出した。
「ハイ、Dear ! 誕生日だってのに浮かない顔じゃないか。」
 そこからひょいと顔を出したのは、
「び、ヴィゴ!?」
 久しぶりに見る親友の生顔に眼を丸くするショーン。
「何だよ、その幽霊でも見るような顔は。こんな色男を捕まえて。」
「いや、その、どうして君が?」
 まだ信じられない、といった顔でヴィゴの顔を見つめる。
 そんなショーンを見てくすり、と笑い、下唇を指で押さえるヴィゴ。微笑をたたえながら歩み寄ると、スッと腕を伸ばし、ショーンを抱きしめる。
「これでもまだ私が幻だと思うのかい?」
 そう囁くと頬に軽く口づける。
「・・・紛れも無く本物だね。ありがとう、ヴィゴ。わざわざ来てくれて。・・・嬉しいよ。」
 そう言ってショーンもハグを返す。ぎゅっと抱きしめたその感触は懐かしくて暖かかった。

「・・・ショーン。」
「何だい?ヴィゴ。」
「本当はいつまでもこうしていたいんだが、実はそういうわけにもいかないんだ。」
「わかっているよ、君も忙しい中わざわざ来てくれたんだろう?」
「いや、それもそうなんだが、違うんだ。・・・・実は、ヤツが来る。」
「・・・ヤツ?誰の事だい?」
 何やら展開がおかしくなり、ショーンはヴィゴから離れてその意味を問う。
「俺とした事がドジった。今日ここに来ている事をヤツに知られたんだよ。」
「だから、ヤツって誰だい?」

「・・・オーランドだ。」

 座った目つきで、いかにも恐ろしい物の名を口にするかのようにヴィゴが言った。
「へえ!オーランドも来るのかい?それは嬉しい知らせじゃない・・・・」
「何だって!?」
 予想外のヴィゴの反応にショーンは驚く。
「そ、そんなに驚く事ないじゃないか。君たちは友達だろう?まさか、ケンカでも?」
「違う。違うんだよ、ショーン。せっかく1年に1度しかないアンタのバースデーなんだから2人水入らずで過ごしたいじゃないか。」
「はい!?」
「タダでもアイツとはトロイで一緒だったんだろ?しかもこの間のゴールデングローブの時は一晩中飲み明かしたらしいじゃないか!」
「いや、それは、そうだけど・・・」
「これを見ろ!!」
 そう言ってヴィゴは自分の携帯電話を差し出した。画面に映っているのは写真の様だ。
「全部アイツが送りつけてきたんだ。」
 そこにはショーンとオーランドの写真が沢山映っていた。トロイの撮影の時の物、カンヌで撮ったもの、各地のプレミアに行った時のものや、先日のGG賞の後で飲みに行った時のものまで、ずらりと。
 もちろん殆どがショーンにも身に覚えのあるものだった。やっと使い方を覚えたんだと嬉しそうにあちこち撮りまくっていたオーランドの無邪気な姿を覚えている。
「器械オンチのオーリがやっとカメラとメールの仕方を覚えたんだ。嬉しくてやった事だろう?」
 するとヴィゴが キッ とショーンを恨めしそうに睨みつける。
「送られる方の身にもなってみろ!!こちとらアンタに会えなくて寂しい思いをしてるってのに、コイツはアンタと一緒に仕事して、飲んで、遊んで!散々自慢されたんだ!!あれはいやがらせのレベルだぞ!!いや、アイツの事だ。きっとそうに決まってる。」
 両手の拳を握り締め、虚空を見つめるヴィゴ。
「考えすぎだよ、ヴィゴ。それに、恐らく、電話で話す分にはオーリより君の方が断然多いんだぜ。」
まあ、せめてその辺では優位性を保っておかないとな。
「何か言ったかい?」
「いや、何も。さ、ぼやぼやしてられない!オーランドが来る前に移動しよう。雰囲気のいいバーを見つけたんだ。とりあえずそこに行こう。」
 そして少し酒が入った後俺のホテルに行って、良い雰囲気になって、「スキあらば口説いて迫ってその後は・・・・ふふふふふw」
「あー、ヴィゴ?何を考えてるかあえて深く知りたくないけど、途中から考えが声に出てるよ。」
 やや顔を赤らめながらショーンがツッコミを入れる。
「おっと、これは失礼。さ、行こうか。」
 言うが早いかヴィゴはショーンの手を取るとエレベーターに向かう。エレベーターのフロア表示が近づいて、二人のいるフロアにやって来た。
 チーン
 という音と共に扉がゆっくりと開かれる。

「ハ〜イ!ショーン!! HAPPY BIRTHDAY!!
  I've missed you very very much!!」


 今や世界中の女性がその笑みに酔いしれる、オーランド・ブルームその人が、両手一杯に花束を抱え、中から現れた。(同時にヴィゴの声にならない叫びが響く)
「やあ、オーランド。よく来たね。」
「だってビーン・ボーイの誕生日だよ!地球の反対側からだって駆けつけるさ。つい数日前にも、キングダム・オブ・ヘブンのPRで日本に行って来たばかりだったんだ。やっぱ日本の歓迎って熱があってイイね!あ、ハイ、これプレゼント。」
 にこにこと笑いながら花束をショーンに渡す。
「コレもプレゼントw」
 両手がふさがったショーンの首に手を回し、花束を間に挟むように抱きつくとショーンにキスをする。
 もちろん、口に。正確には唇に。 思わぬ不意打ちに顔を赤くするショーン。
「コラ、どさくさに紛れて何するんだ!」
 半泣きに近い状態でヴィゴは無理やりオーランドを引き離す。
「あ、いたの?王様。お久しぶり〜元気だった?」
「ああいたさ。お前が来る少し前からずっとな!せっかくだが、俺の方が早い。今日・・・今夜は俺がショーンを独り占めする。お子様は帰った帰った。」
 ショーンの肩に手を回し、もう片方の手で シッシッ と手振りする。
「えー、ダメだよ。俺明日の午後には戻らなきゃダメなんだ。だからそれまでショーンと一緒にいさせてよ。」
「俺が先だ。日が悪かったな。今回は諦めろ。」
「ムカ どうしてヴィゴが仕切るのさ。いつからビーンボーイはヴィゴの所有物になったんだよ。」
「ショーンは誰の物でもないさ。ただこういうのは先着順だろ?俺が1番、お前が2番。」
「だーかーらー!どうしてそれをヴィゴが勝手に決め付けるわけ!?」

「2人ともやめてくれ!!」

 徐々に険悪になっていく2人を見かねて、ショーンが叫んだ。口論を止める2人。滅多に怒ったり怒鳴ったりしないショーンに驚いている。
 ショーンは興奮で顔をわずかに上気させ、ギロっと2人を睨む。演技でもあれだけの強面顔が出来る人間が、本気で怒るとさらに迫力が増す。加えて、普段優しい彼だからこそ、怒った時は、いや、怒らせてしまった時、その原因を作ってしまった側は罪悪感を抱かずにはいられないのだ。彼を大好きなら尚更である。
「・・・せっかくの私の誕生日なのに、どうして私の大好きな人達がケンカする姿を見なけりゃいけないんだ!?」
「・・・すまない。大人気なかった。」
「僕のほうこそ。つい、売り言葉に買い言葉で。」
 ショーンは しゅん とする2人の手を無言で掴むと重ね合わせた。
「じゃあ、仲直りだ。」
 そう言うとにっこり笑った。その笑顔につられて2人も微笑む。

「せっかく3人そろったんだ。3人仲良く過ごそうじゃないか。」
「でも、どうやって?」


 −30分後−

「ちょっと、ヴィゴもうちょっとソッチ詰めてよ。落ちそうだ。」
「こっちだってギリギリなんだよ。我慢しろ。」
 ショーンの部屋の中、にぎやかな声と宅配ピザの匂いがする。
 結局、3人は折衷案をとった。つまり、結果的に、ショーンの部屋で3人仲良くバースデーを祝おう、という事になった。
 ダブルベッドに大の男3人がひしめきあっている(さすがに狭い)。側には宅配ピザとポップコーンとビールが並んでいた。その向かいにはハイビジョンのテレビにDVDプレイヤー。上映作品はオーランドが飛行機の移動中に観ていたという『トム&トーマス』。これを観賞しながら夜を明かすことになったのだ。

「うー、やっぱせまい。 ! じゃ、いいよ、俺こうするからw」
 狭いベッドの中で、オーランドそう言うと、半身をショーンの体に抱きつくように重ねた。縮れた黒髪がショーンの顎の辺りにふわっとかかる。無意識にその髪をくしゃくしゃと撫でてしまう。
「あ、ずるいぞ、オーリ。俺も。」
 負けてなるものかとヴィゴも半身をよじると、ショーンにぴったりと寄り添う。
「ヴィゴ、君、案外大人気ないんだな。」
「殊、アンタに関してはね。」
 イタズラっぽく囁くと、耳たぶを甘噛みした。
「!!」
 顔を赤めるショーンを愛しそうに眺めながら、ヴィゴはDVDのリモコンの再生ボタンを押す。 

「なあ、やっぱり別の映画にしないか?」
「何言ってるのさ!これほど相応しい作品は無いよ!」
「同感だ。もちろんコメンタリーをつけてくれるよな。」
「色々と、恥ずかしいんだけどな・・・」
「まあまあ、じゃ、改めて乾杯しようよ!2人ともハイ、ビール持って。」
「気が利くな、オーランド。じゃ、改めて、」
「「ハッピー・バースデー ショーン! I Love You!!」」
 そう言って両の頬にキスが降る。
「ありがとう、2人とも。I love you too.」

 本日一番の笑みがショーンの顔に浮かんだ。


 HAPPY PRETTY BIRTHDAY ! !


                                         おしまい   




アトガキ
 思えばサイト1周年記念とか、ボロミアの命日とか日々の忙しさにかまけて大事なイベントをことごとくスルーしていましたが、
今日という日はそうはいきませんぞ!!

 しっかり書きました!久々にちょっと長めのRPS。誕生日ネタ!!・・・でも、愛かわらずカップリングは絞れずにヴィゴVSオーリ×ショーン という形になってしまいましたが、結果おーらいって事で。
 基本的には皆に愛される豆 がモットーですからw
 色々時事ネタを仕込んでみました。トムトマ(時事じゃないけど)とかキングダムオブヘブンとか。現在撮影中のニキ・カーロ作品で競演中のシャーリーズ・セロンとその恋人で元ゴルンでリーグでドリアンのスチュワート・タウンゼントまで!!ホント、見境いないですね。
 今はとりあえず早くあげるので、確認は後です!!一応世界のどこかが4月17日の内にアップしなければ!!