ここはマルタ島にある映画スタジオ。今、歴史スペクタクル映画『トロイ』の撮影が行われている最中である。今をときめく大スター達の豪華共演ということで、公開はまだ先でありながら大いに注目されている作品であった。 今日はこのスタジオで撮影が行われる予定であったが、機材の不調が起こり、撮影は一時中断されていた。 パタパタパタ・・・メインキャストの1人であるオーランド・ブルームがスタジオ内の廊下を走っている。撮影が中断され、時間をもてあましていた彼は、誰かいないものかと辺りを見回していた。 長い廊下に部屋がずらっと並んでいる。すると、 『・・・このままで済むとは思うなよ!』 「・・?」 何やら物騒な声が聞こえてきた。 「ケンカかな・・?でも、この訛りは・・・ドコのだっけ?」 首をかしげながらどの部屋からだろうと耳をすませる。 『・・だから言ったろう?俺を甘く見るなと。』 また聞こえてきた。そっと声のした部屋に近づき、そっと扉を開けてみた。 するとそこには・・・ 「なんだ、ショーンにブラッドじゃないか。」 「どうかしたかい?オーリ。」 「やあ、オーランド。」 同じ出演者のショーン・ビーンとブラッド・ピットが椅子を並べて座っていたのだ。彼らも撮影が中断されたのであろう。映画の衣装のままだった。オーランドに限らず、出演者もスタッフも、もうミニスカート姿のヒゲ男を見ても何とも思わなくなっていた。 「いやさ、何か物騒な声が聞こえてきたから、何だろうと思って。」 「物騒な声で悪かったな。あれは私だ。」 眉をひそめてそう答えたのはショーンであった。 「一体何してたのさ?」 側にあった椅子をひっぱりだして二人の前に座る。 「ああ、実は・・・」 「ちょっと待った、ショーン。」 「?」 ブラッドが制する。そしてイタズラっぽく微笑んだ。 「どうせならクイズにしよう。オーランド、問題だ。僕とショーンにはある共通点がある。それがわかるかい?」 「? それとここで何していたかが関係あるの?」 「ああ、大いに関係あるね。な、ショーン。」 「まあ、そうだな。」 「えーっと、共通点・・・あ!2人ともブロンドだ。」 本当は真っ先に思いついたのは2人とも離婚暦がある、という事だった。が、色々考慮してそれを今口にすれば雰囲気が悪くなるだろうと判断し、言わないでおこうと決めた。 「ブー、違います。」 「えー!違うの?えっと・・・・じゃーあ、、それぞれの国でセクシー俳優だ。」 「いや、私はそんなたいそうなものじゃないぞ。」 「そう思ってるのは本人だけだよ、ビーン・ボーイ。ウチの母さんだって姉さんだってシャープを演ってるアンタにキャーキャー言ってるんだぜ。」 「それは・・ありがたいが、でも違う。」 「えー、じゃあ、ヒントヒント。」 足をばたばたさせながら口を尖らす。 「わかったわかった。じゃあ・・職業に関することだ。俳優としてのね。」 「俳優として・・・?」 うーんうーんと頭をかかえるオーランド。その後キャリアが長い、とか普段は短髪、とかいくつか答えを出したが、どれも不正解だった。 「 もーわかんない。教えて、メーデーメーデー、ギブアップ。ねえー、ビーン・ボーイー、答え教えてー。」 そう言うとオーランドは椅子から降り、ふざける様にショーンのひざにすがりつく。 「ふむ、じゃあ、そろそろ答えを教えようか。」 ブラッドの方を見て言いながら、その手は無意識にオーランドの黒い縮れた髪を撫でていた。オーランドも気持ち良さそうに笑顔を浮かべている。 まるでペットを撫でているご主人様みたいだ、とブラッドはおもわず微笑んだ。 「そうだな、じゃあ、正解を言おう。僕らは、とてもよく似た役を演じたことがあるんだよ。ブロンドの若いIRAのテロリストで、」 「警察の人間であるハリソン・フォードを殺そうとするんだが、逆に返り討ちに合って、船の上で死ぬんだ。」 「あーーー!!!そっかーーー!あー、そういえばそうだ。パトリオット・ゲームとデビルだろ!!何だよ、知ってたのにーー!気がつかなかった。」 そう叫んでオーランドは地団駄を踏む。その様子を見て二人は笑った。 「僕がデビルを演った時、アイルランド訛りがなってないってコキ下ろされたんだ。・・・あれ以来アイリッシュはおろか、訛りのある役が来ない。それでショーンにアイルランド訛りをちょっと教えてもらってたんだ。訛りは話せたにこした事はないからね。」 「それで物騒なセリフを言ってた訳なんだよ。」 「そっか、どっかで聞いたことがあったと思ったらアイルランド訛りだった。なーんだ。」 そうしてまたどっかりと椅子に座る。 「で、どう?習得できそう?」 「ブラッドは飲み込みが早いよ。」 「ま。まだ撮影期間は長いんだし、ゆっくり教わるよ。よろしく、ショーン。」 「あ、ズルイ!俺も、俺にも教えて!」 「それは構わないが、話せないのか?オーリ。」 「うーん、なんとなーくはできるんだけど、ホラ、所詮南の坊ちゃんだし。ちゃんと習った事はないんだ。だからさ、教えてよ、ショーン。」 「わかったわかった、1時間20ポンドだぞ。」 「人気俳優の時給にしては破格だね、ショーン。」 「そうだよ、ブラッドならもっとふんだくっても平気だよ。分給20ドル位とってもいいんじゃない?」 今度は3人そろって笑った。 そこへノックがして、スタッフの1人がやって来た。 「お待たせしてすみません!機材の方、直りましたのでセットの方へお願いします。」 「と、いうわけだ。続きはまた今度。じゃ、行こうか。」 「ああ、只でも撮影が押してるからな。がんばらないと。」 「相変わらずマジメだね、ビーン・ボーイ。撮影が長引けばその分一緒にいられるじゃない。」 にっこりと笑みを浮かべてオーランドが言った。 「・・・それは嬉しいが、予定が押せば困るのは君だろう?また大変そうな役を引き受けたらしいじゃないか。」 「心配してくれてんの?へへっ、ありがと!でもサ、それは若さで乗り切るから。」 互いに肩をぽんぽんと叩きながら廊下を歩く。ブラッドは友達のような、親子のようなこの2人を横目で見つつ、微笑を浮かべている。 今回は良い共演者と巡り合えた。 不意にブラッドはショーンの肩に腕を回す。 「オデュッセウス殿、敵国の王子とこの様に会っているとは、家臣たちに知れたら大ごとです。この場は見なかった事にしとくんで、さっ、速く」 「へ?あ、うおっ」 そう言うが早いかブラッドはショーンの腕を取ると駆け出していった。 「あ!ちょっと、ヒデェ!!アキレス!俺のヘレンを返せーー!!」 今日も廊下に叫び声と笑い声が楽しげに響いている。 おしまい |
後我来 ハイ、うわー、書いちゃった。ブラッド・ピットを!!!何か無性に変な感じです。ピットさんをブラッドって書く事自体抵抗が。普段はフルネームで呼んだりしてるんですよ。でもこの方には腐女子ビジョンは入りませんねー。だからこんな感じのSSが出来ました。どちらかというと花豆風味。スラッシュってません。でも最後何気にスゴイこと言ってるかもしれません。 トロイ撮影中、という設定です。元々はブラッドとショーンはこんなにも似たような役を演じた事があるんだぞー!!というのが言いたかっただけです(笑)でも、アイリッシュの訛りがイマイチだと批判されてたのは本当です。 オーランドの事を『オーリ』と呼んでるのはショーンです。オーランドとどちらかというと親しげな口調で話してるのもショーンです。そして、割と丁寧な口調で一人称が『僕』なのがピットさん。 公開は春ですので、待ち遠しいですねー。LORみたいな豪華なBOXでDVDが出るといいな・・・って気が早すぎですか?ですね。 トロイ撮影中、という設定で、まだ色々書いてみたいですねー。(人気者ショーンとそれがちょっと気に食わない花とか。仲良し・ほのぼので)今度はエリック・バナとか登場させて。せめてBホークダウンくらい観とかないと。(ビデオあるのに観てないんですよ)だから彼の出演作品はネズミーの魚映画しか観てません。 ふー。 |