チャレンジ!10のお題・RPS編B

お題はコチラのサイトさまから借りました。


1.王座
「ホラ、ショーン、こっちだ。早く早く。」
「一体こんな格好で何処へ連れて行こうっていうんだ?」

 カシャカシャと鎖帷子や剣の音が鳴る。
 ボロミアとアラゴルンの格好のまま、ショーンはヴィゴに誘われてスタジオ内を小走りで駆けている。
 セットでの撮影を終えたショーンは、さあ着替えよう。という所で友人に声をかけられ、言われるがまま、後をついていたのだ。

「ここだ、着いたよ、ショーン。」
 重々しい扉を開けて、ショーンは息をのんだ。

「これは・・・もしかして、ゴンドールの?」
「そう。王座だ。」
 2人の前に現れたのは、ゴンドールの城の内部のセット。王座と執政の椅子がある部屋だった。
 このセットにアラゴルンとボロミアが居る、という奇妙な絵になる。原作では決してありえないシーンだ。
「これが・・・君の王座だね。そしてこっちが、執政の椅子か。」
「ボロミアも小さい頃、ふざけて座ってたかも。」
「ありえるな。・・・ヴィゴ、もしかして私をこの格好のまま連れてきたのは・・・」
「御名答w」
 イタズラっ子の様ににんまり笑うと、ヴィゴは懐からデジカメを取り出した。
「どうしても、この椅子に座る私たちを撮りたくてね。だって、本当ならありえない光景だろう?」
 そう言ってショーンを椅子の方へ導いて座らせた。
「いいのかな?こんな事して。」
 ボロミアの衣装のままだからであろうか。どうも複雑な心持ちを覚えるショーン。
「悩んだ末の決断だ。何、記念写真だと思えばいいじゃないか。」
 そうして執政の椅子に座るショーンをカメラに収める。
 そして、部屋の隅にあった椅子を引っ張り出し、その上にカメラを固定させた。自動シャッターにして、ヴィゴはいそいそと王座へ駆け寄ると慎重に腰掛けた。
 パシャ
 シャッター音が鳴る。
 ショーンはふと立ち上がり、ヴィゴの方を振り向いた。
 そしてしばらく王座に座るアラゴルンを見つめる。

「ショーン、どうした? 言葉が出なくなる程カッコいいか?」
 ショーンはその問いかけに答えず、黙ったまま王座に座るヴィゴを見つめていた。
「ショーン?」
 つう。
 ショーンの緑色の瞳が潤み、一筋の涙が伝った。
「シ、ショーン!?」
 慌ててヴィゴは王座から駆け下りると、友人の肩に手を置いて顔を覗きこむ。
「ヘイ、ショーン、どうした?」
 ヴィゴに声をかけられ、ショーンはハッとして我に返る。
「や、あの。大丈夫だ。」
「・・・どうして泣いたんだ?」
 優しく声をかけながら、頬に伝う涙を指で拭う。
「いや、ボロミアの格好をしてるせいか、王座に座る君の姿を見て、その・・すごく感動したんだよ。この光景はボロミアがさぞ見たかった姿だと思うと・・・でも、本当は見ることができなくて、だから、一層・・・」
 再び涙が流れる。
 そんな友人をヴィゴはそっと抱きしめた。

 アラゴルン、あんたは実に惜しい友人を亡くしたものだ。心から同情するよ。
 せめて私は、後悔なんかしない為に。大切な人の手を離さない様、無くさない様、努めていこう。
 
2.キッズ
3.南十字座
4.トールキン
5.朝
6.アンダーシャツ
7.ビールを買いに
8.フィンガーペインティング
9.コーヒー&フットボール
10.離別  



あとがき
1:自分でもこのネタはどうかと思ったんですけどね。
  でも書いちゃいました。役に入り込みすぎて、ボロミアの心情になってしまったショーン。
  そんな役者根性のショーンが好きで、それで泣けてしまう気の優しいショーンが好きな藻っさん。