気の向くままにRPS


気の向くままにRPSを書きなぐります。



1: because of You (湯案・豆)

「へえ、舞台を。そりゃいいね!機会があったら見に行きたい。」
「その時は言ってくれ、最前列のチケットを用意するよ。」

 色んなモノがあちこちに転がっている、お世辞にもキレイとは言えない控え室で、英国訛りの英語の会話が聞こえる。
 映画、『アイランド』の出演者であるショーン・ビーンとユアン・マクレガー。
 話の内容は今度ユアンがやる舞台の事らしい。元々舞台もこなせる2人(舞台も映画もこなせるのが英国人俳優の特徴でもあり、強みでもある)の事だから、舞台の話となるとこれが結構盛り上がるのだ。

「イギリスにはちょくちょく帰ってるんだ。だから舞台を見る時間位作れるさ。」
「ありがとう。・・・となると、席はやっぱり後ろにしてもらおうかな。」
「・・?どうして?」
 普段は明朗活発な友人が一瞬言葉に詰まる。珍しいコトもあるものだ、と、年上の友人は思った。
「だってさ、客席のまん前にアンタがいると、余計に緊張しそうだ。」
 普段は強気でまるでやんちゃな少年の様な友人のその殊勝な一言に目を丸くする。
「どうしたんだ?ユアン。君らしくないじゃないか。」
「・・・そうかな?」
「まあ、確かに舞台はナマだし、私ももし客席の一番前に娘たちがいたら多少は緊張するだろうな。でもユアン、君ならできるさ。」
「・・・どうしてそう思う?」
「本番には強いタイプだと思うんだけど。違うのかい?」
 くるりと振り返ったショーン。その顔をじっと見つめるユアン。
 みどりとあおの瞳が数秒間交わる。

 やがて、ふっとユアンが息をもらした。
「そうだな。オレは本番には強い。それは自分でもそう思ってるよ。でも・・・やっぱナーバスになってたのかな?」
「本番を前に緊張する俳優なんてゴマンといるさ。私も含めてね。それに、ある程度の緊張は必要だ。」
「・・・ありがとう、ショーン。」
「え?」
「だいぶ楽になったよ。ま、公演はまだ先だし、今から心配してもなあ。とりあえず、先の心配よりも、いまはこの映画の事を考えないと。」
「それもそうだな。まだ色々アクションシーンが残ってるそうじゃないか。」
「ああ。アンタとの決闘シーンもね。ヨロシク、メリック博士。」
「こちらこそお手柔らかに。6・エコー。」
「じゃ、互いの健闘を祈って。」
 そうイタズラっぽく笑うと、ユアンはショーンの頬にくちづける。
 きょとんとした顔のショーン。心なしか頬がうっすらとピンク色になっている。
 その様子を見て意味ありげに微笑むユアン。

「・・・・こういう時は握手がフツーだろ?」
「ゴメン、博士。ホラ、まだ3歳児だから世間知らずでさ。」

 陽気な笑い声が部屋に響いた。
2:ミニスカ談義(血・豆)

「・・・仕事柄さ、色んな役演って、色んな衣装着たけどさ、コレはなかなか結構大変だよなあ。」
「確かに。脚がスースーするのが何かまだ慣れないな。」

 マルタ島の砂浜に大きく咲いているパラソル。その下で談笑する俳優が2人。ブラッド・ピットとショーン・ビーン。
 撮影の合間、このミニスカートの様な衣装について話をしている。

「昔は下着なんて着てなかったのかな?」
「そうみたいだね。衣装係がそんな事を言ってたよ。今は下着があるから残念だわ、とか言ってたな…」
「ソレ、軽いセクハラだぞ。」
「そうか?」
 涼しい顔でミネラルウォーターを飲むショーン。ブラッドのキルトよりさらに短い、まるでミニスカートの様なその布切れから覗く脚は思いのほか白い。

 ・・・何でショーンのだけあんなに短いんだ!?誰かの陰謀か?それともオレへのサービスか・・・?

 こっそり足元をチラ見しつつ、ブラッドもミネラルウォーターの瓶に手を伸ばす。
「お嬢ちゃん達は何て言うかな?父親のミニスカート姿。」
 少し意地悪そうな顔でブラッドが言う。
「・・・仕事なんだからわかってくれるさ。」
 少しふてくされた様にショーンは答えた。
「ま、共演者としては、目の保養になっていいんだけどね〜こんな事もできるし♪」
「ぎゃ!!」
 そう言うが早いか隣に座っているショーンのキルトをひらりとめくった。
「な、何をするんだ!?」
「一度やってみたかったんだよ。コレを女優陣にやったらそれこを訴訟モノだしな。」
「・・・これも十分セクハラになるんじゃないか?」
「友人の軽いイタズラだ。笑って許してくれよ、軍師殿。」
「・・・」
 ギロっと冷ややかな視線。でも、そんな視線すら、魅力的に思えてしまうから不思議だ。
「ゴメンゴメン。じゃあ、ホラ。ショーンもオレのスカートめくっていいよ。」
「は?どうすればそういう結論になるんだ?」
「2千万ドル俳優のスカートをめくれるってそうそうないチャンスだぞ。ホラ、遠慮するなってw」
 そう言ってまるで少年の様にニッコリ笑う。
「結構だ。まったく、子供みたいだな・・・」
 苦笑しながらもショーンは優しい眼差しを向ける。それを見てブラッドは心の中でつぶやく。

 心置きなく素の自分を出せる相手ってのは、なかなかいないんだぞ。

 そうして、そんな相手に巡り会えた奇跡に 感謝した。
3: like the brothers(公・豆)

「カーット!!」

 監督の声が響く。それと同時に幾人かのスタッフが、機材や役者の側に駆け寄った。
 今日はロードオブザリングの追加撮影。
 DVDに追加する為の新たなシーンを撮っているのである。原作には無い、オスギリアスで執政家が揃うシーンだ。

「ちょっと機材の調子が悪いらしい。すまないがしばらく休憩だ。」
 それを聞いて役者達は一息ついて、休憩所へ歩き出す。
「デヴィット。」
 ボロミア役のショーン・ビーンが呼びかける。
「は、はい?」
「一緒に休まないか?」
「もちろんです。兄上。」
 その返しにショーンは笑みを漏らす。
 それを見たデヴィットがわすかに頬を染めたのは、少し冷たい風のせいばかりではないだろう。
 ガチャガチャと甲冑を鳴らしながら、まるで本当の兄弟の様に肩を並べ歩いていく2人のその姿に、原作を知るスタッフはこっそりとデジカメのシャッターを鳴らすのであった。

「しかし、原作にないシーンを撮れるのは本当に嬉しいな。」
「私もです。本編の撮影中はあなたに会う事はなかったものだから、こんな機会があって本当に嬉しいですよ。」
 しばらくホットコーヒーをすすりながら話す2人。

「・・・どうかしました?」
 どうも相手が自分の顔ばかり見ている様な気がして、たまらず聞いてみる。
 もちろん、見られるのは嫌ではない。むしろ嬉しい位の勢いだ。
「いや、すまない。前にPJから聞いたんだが、君をファラミア役にした理由のひとつが、私と似ているから、って聞いたものだから。」
「そうみたいですね。似てます?」
 くるりと体の向きを変え、ショーンと真正面に向かい合う。
「うーん…今はすっかり化けてるから、似ていると言えば似てると思う。君はどう思う?」
「あなたに似てるなら光栄ですよ。」
 そう言ってにこりと笑った。
「・・・それは答えになってないんじゃないかな?」
「正直に答えたんだけどな。」
 原作の2人なら、本当にこんな問答をやってそうだな、と思うショーン。
「じゃあ、こうしましょう。今日、撮影が終わって、2人ともスッピンになったら、もう一度確かめる、というのは?」
「!・・・それはいい考えだ。良い酒場の場所は知ってるんだろう?」
「モチロンですよ、兄上。調査済みです。」
 そうして2人は声をあげて笑った。

 その夜、昼間のショーンとデヴィットを見ていたスタッフ達は、まるでボロミアとファラミアが本から抜け出してきた様だった、と感激しながら、この撮影に加われた事を感謝したと言う。
     



あとがき
1:because of You ⇒ホントはショーンがいるから緊張しそうだ、と言ってるんですよ。それを豆氏は単に舞台をやるからナーバスになっているのだとプチ勘違い(笑)
 確かアイランドのロンドンプレミアの時(ジャパンプレミアの時もそう)は既に舞台中だったはず。その時にちゃっかり舞台みていたらなー。と思ったりして。
 年下俳優にもてあそばれる豆もステキだな、と思う今日この頃。

2:ミニスカ談義⇒ふざけたタイトルの割にはキレイにまとまったかと。
 『巡り会えた奇跡』という言葉は私のバイブル漫画・『ここはグリーンウッド』から拝借しました。
 それにしてもオデのキルトは犯罪的に短いですよね。加えてあの肩が見えるチラリズム満載のデザインの上着。これはきっと何かの策略ですぞ!!・・・共演者は目のやり場に困った事でしょう。
 ありがとう、衣装係の人!私はアナタがアカデミーに衣装部門でノミネートされたのに納得ですw。

3:like the brothers⇒もう、ファンとしてはあのオスギリアスの追加シーンは涙が出るほど嬉しかったでしょう。だって、原作ですら描かれていなかったボロとファラが一緒にいるシーンをよりによって実写版で拝めたわけですから!!しかも父上付き!!
 飛行計画チャット中に、『不思議の森』のハム太さん達と何かの拍子にデビハムさんの話題になり、チャット終了後、公豆で書きませんか?と御提案したら、心優しくも受け入れて下さいました。ありがとうございます!!
 私はこんなんしか書けませんでしたが、いかがでしたでしょうか?公さんの素の性格がどうも掴みきれなくて、ファラミアとダブってしまいます。本当ならもっと垢抜けた、くだけた感じなのかしら、と思いつつ、前のSSでは完全に『です・ます』調でファラミアくさく書いてしまったので、今回は合わせてしまいました。
 うーん。今後変更してしまおうかしら?
 で、『スッピンで会う』というのはまあ、ぶっちゃけ終わったら飲みに行こうぜ、ヘイ・ブラザー!!という意図で、それを察したショーンが、誘うからには、オススメの店があるんだろう、と聞き返したワケです。その辺の意志の疎通が互いに出来てる辺り、兄弟役ってだけなのに、本当に兄弟みたいで不思議だわ、とお互い思って、それもまた悪くないかなあ、なんて感じて…ええい!!このラブラブラザーズ!!ってな感じです。…その前に己のボキャブラリーに『異議有り!!』ですな。