「なあ、ショーン。結婚生活が上手くいくコツって、あるのかな?」 「それは聞く相手を間違えているよ。私は3回結婚と離婚を繰り返した人間だぞ。」 「俺は結婚2回と離婚が1回。」 「知ってる。」 「上手くいってるな、って時とそうでない時があるんだよなー。」 そんな会話を交わしたのはもう1年以上も前になる。 その話の相手は最近離婚を発表した。 ハリウッド1のおしどり夫婦、なんて言われていたのに。今でもカンヌで夫婦連れ添ってレッドカーペットを歩いている姿が記憶に残っている。 そして、今。ショーンはその人が来るのを待っていた。コトの起こりは2,3日前にさかのぼる。 「ハイ、ショーンw久しぶり。」 「もしもし?ブラッド?やあ、久しぶりだね。その、元気・・・じゃないだろうな。」 「いいや、そうでもないよ。離婚ホヤホヤさ。」 「ブラッド。」 「・・・ちょっと茶化しただけさ。でもホント、手続きは順調なんだ。平和的別れというか、そんなカンジ。でさ、ショーン、折り入って頼みがあるんだけど。」 「たのみ?私にできるなら何でも力になるよ。」 「・・・嬉しいね。アンタが力になってくれるならホントに何でも上手くいきそうな気がする。」 「?それは、少し買いかぶりすぎだよ。」 「要は気分の問題だよ。それで、頼みっていうのはね・・・」 話を要約すると、アメリカ生まれのブラッドは今、イギリスのロンドンに家を買おうと思っているらしい。 それでプライベートで下見やら何やらをしたいので、しばらくショーンの家に厄介になりたい、との事だった。 家を買う、と言っても移住するわけではなく、いわば別荘のようなものである。建築に興味がある彼は、ヨーロッパ各地にある歴史と伝統のある建築物を見るために、拠点となる家が欲しいと言うのだ。 仕事がひと段落つき、丁度イギリスの我が家にいたショーンに断る理由はなかった。 空港まで迎えに行こうかと申し出たが、誰かに気がつかれる可能性があるからと言って断られた。 空港に着いたから、という連絡をもらってから小一時間ほど経っただろうか。久しぶりに再開する友人の為にいそいそとお茶の準備をし始めた。 世界のトップスターの訪問があると聞いて、娘達は黄色い叫び声を上げていた。だが、あくまでも個人的な客なので絶対に口外しないようにとクギを刺しておいている。 ピンポーン 不意にインターホンが鳴った。 「ハイ、どちら様?」 「久しぶりだね、我が親友たる軍師殿。まさかオレを忘れたわけじゃないだろう?」 おどけた声が返ってきた。 小走りで玄関へ行き、扉を開ける。そこにはハリウッド屈指のスーパースター、ブラッド・ピットその人が立っていた。カンヌで会った時は坊主に近い位刈り込んでいたいたが、今は額に前髪がかかる程になっていた。 「ハイ、ショーン。会えて嬉しいよ。」 「こちらこそ。よく来てくれた。」 互いに微笑みながらハグをして、家の中に入る。 リビングのソファに通すと、ショーンはお茶を淹れ始めた。 「っと、ブラッド、紅茶でよかったかな?コーヒーもあるけど?」 「アンタが淹れてくれるなら何だって嬉しいよ。それに、英国に来たからにはやっぱり紅茶がいいと思ってたし。」 「そうか。じゃあ、もう少し待っててくれ。」 やがて辺りに紅茶の香りが漂い始める。 「んー。良い香りだ。」 「どうぞ。」 そうして紅茶を一口すするとブラッドは気持ち良さげに目を閉じながら「うーん」と唸った。 「美味いお茶だ。これからしばらくこのお茶が楽しめるんだな。嬉しいよ。」 「しばらく、と言っても10日間位だろう?」 「割と長いほうだよ。でも、迷惑じゃなかったか?アンタもせっかくの休みなのに。」 「かまわないよ。特に予定もなかったし。それに、娘たちも喜んでいる。夕べ3人揃ってゲストルームを掃除してくれたよ。」 「それは嬉しいね。後でチップをはずまないと。・・・ほっぺにキス位でいいかな?」 「十分すぎる。泣いて喜ぶと思うよ。」 その後2人は午後のお茶を楽しみながら、これからの予定や互いの近況などを話していた。 結果、今日は夕飯の買い物がてらこの辺りを散策し、明日ロンドンを案内する事になった。 出かける前に家の中を一通り案内し、最後にゲストルームへと案内する。 「えっと、タオルやバスローブなんかも一応一通り用意したよ。好きに使っていいから。それと、他にも必要な物があったら遠慮なく言ってくれ。」 「一流ホテルにいるみたいだな。」 「ホテルというより、B&Bだろう。」 「アンタが経営者かい?」 「一応ね・・・最近は留守がちだけれど。・・・それでお客様、他に用はございませんか?」 ホテルボーイを真似てかしこまった風に話しかける。 ブラッドはわざとらしく腕を組み、何か用事がないか考える観光客の真似をした。 「ああ、そうそう。ここは夕食は何時から?」 「お客様の好きな時間でかまいません。」 「朝食は?」 「朝の7時からオープンしています。」 「ルームサービスはある?」 「もちろんです。お好きな時にお好きなものを言ってくだされば。」 「結構。」 そう言って パシン と手を打ち、ショーンにゆっくりと歩み寄った。 「ここは素晴らしい宿だね。サービスは満点、雰囲気抜群、そして暖かいスタッフのもてなし。」 「恐縮です。」 「では、これはチップだ。とっておいてくれ。」 「んっ・・・」 言うが早いかブラッドはショーンの肩を掴むと、顔を寄せて口付ける。 形の良い、薄い上唇を優しくついばみ、顔を離した。 「十分すぎるチップだろ?さ、散歩に行こうぜ、ショーン。」 何食わぬ顔で笑いかけると一足先に廊下に出て行く。 「え?あ、ぶ、ブラッド?」 顔をほんのり染めながら、幾分困惑気味にショーンはその後を追った。 そうして英国滞在・一日目の陽が暮れてゆく。 END |
あとがき ええと・・・とうとう書いちゃいました。血豆。トロイの頃からちらほらと見てきたのですが、なんとなーく、自分でも書きたくなってしまって。やっぱBP離婚とロンドンで家探し、という記事も多少は影響ありましたが。 家と言えば、オーランドもロンドンに家買ったんですよね。・・・ご近所さんかw なんでしょうね、指輪役者はショーンとカップリングで好きなのですが、ピットさんは映画を映画館で観るようになった頃からのファンで、かれこれファン暦9年目になります。つまり、双方とも愛があるんですよ。 いやー、これからどうしちゃんでしょうね?滞在と言ってるからにはもうちょっと書きたい気持ちでいます。気長にお待ち下さい。 |