こつん、とショーンは壁際に頭を当てる。無意識の内にその目は壁に掛けられた時計を探していた。地球の裏側は今何時だろう?と。 ぶるぶると首を振る。一度納得した事じゃないか。 今、地球の裏側、ニュージーランドではロードオブザリング−王の帰還−のプレミアが行われている所だ。自分も参加した、映画の歴史に間違いなく偉大な足跡を残す事になるであろう壮大なプロジェクトの最終章がいよいよ今月封切られる。 彼が演じたボロミアは第1作目で命を落とす、という役なのでそれ以降は彼の出番はほとんど無い。第2部の劇場公開用に使われるはずだった追加シーンも、検討の結果DVDの方へ収録される事となった。第3部でもボロミアの出番はあるが、わずかである。 加えて彼は今、ハリウッド1のヒットメーカーがプロデュース、売れっ子人気俳優が主演する大作映画の撮影真っ最中なのである。超売れっ子の2人が参加しているだけあって、撮影の方も余裕がない。 そんな理由から、彼は映画公開に伴う諸々のイベントに参加できないでいた。正直、盛大なイベントに参加している仲間たちの笑顔を見るのが今は辛い。自分もあの場に居たい、という思いが募るばかりである。携帯を切り、ホテルの電話線も抜いて、(我ながら馬鹿らしいとは思うけど)酒を普段より多めに取ってベッドに潜り込む。 本当なら、『おめでとう、随分盛り上がってるみたいじゃないか。』なんて一言でも電話を入れたら向こうも喜んでくれるとは思うのだけれど。ああ、まったく!自分がイヤになる! そんなことをあれこれ考えている内に、いつの間にかショーンは眠りに落ちていた。 真夜中過ぎ、喉が乾いて目が覚める。むっくりと起き上がり、冷蔵庫からミネラルウォーターのビンを取り出し、飲み干した。 明日の撮影も早い、もう一眠りしようと思いベッドに潜り込む。ふとサイドテーブルの携帯電話に目がいった。 「もしかしたら、子供たちが何か連絡を・・・」 自分に言い訳を作って、彼は電話に手を伸ばすと電源を入れる。見ると留守電が数件入っていた。ゆっくりと再生ボタンを押すと、真っ先に流れたのはガヤガヤという喧騒の音とごそごそと人の気配。 『ハァ―――イ!!ビーン・ボーイ!!HOW ARE YOU?!!』 いくつもの声が重なって聞こえる。 彼らだ。聞きなじみのある声、声、声。 『聞こえる?ビーン・ボーイ?今はアメリカだっけ?こっちは昼だよ!ああ、時間が無いからバンバン行くよ!まずは僕から、君がいなくてすっごく寂しいよ!ん〜CHU!』 『今から飛行機でコッチに来なよ!』 『飛行機じゃダメだ、コンコルド!』 『ロスタイムは5分だよ〜』 『こら、無理を言うでない!馬鹿もんが!やあ、ショーン、元気かね?』 『ちょっと、オレにもしゃべらしてよ!ハイ!北のダンナ!元気かい?こっちはにぎやかだけれど、やっぱアンタがいないと物足りないよ!あ、ちょ、まだ・・』 『タイムアップだ、エルフボーイ。ハイ、ショーン、そっちは夜中かな?この連中をまとめるには1人じゃ大変だ。アンタも手伝ってくれればよかったんだが。まあ、細かい事はまた報告するよ。』 『ハロー、ショーン?敬愛する兄上がいないと寂しいな。夫婦そろった所を見せたかったんだけれど。』 『ハーイ、ショーン。今日は兄も来てないの。私たち義兄妹(きょうだい)がそろう所が見たかったんだけれど。残念ね。』 『もしもし?ショーン?こっちの男連中は皆幼稚園児みたいな騒ぎよ!あなたみたいなジェントルマンは誰もいないわ!今からでもいいから来てくれない?』 『やっと私の番かね。やあ、ショーン、皆きみがいないと寂しいとさ。無論、私もその一人だよ、あ、』 プツン、 ツー ツー ツー・・・・ 電話が切れた。留守電の時間が切れたのである。 電話を握り締めながらショーンは目を閉じ、喜びをかみ締める。その時、電話が再びピー、と音を出し、次のメッセージを送り出す。 『ふう、ショーン、ホビット4人組だよ。さっきの電話じゃ物足りないからね。今は少し時間があるんだ。正直さ、今日という日はこの作品に関わった人たち皆に来てもらいたかったよ。でも、やっぱり俳優、というかこの世界って感情だけでどうにかならないものもあるんだなって切実に思うね。ホント、寂しいよ。フェローシップの1人がいないんだもの。 We really really missed you ! our dear Bean-Boy!!』 『ふむ。言いたい事は皆ライジが言ってしまったね。と、言うわけだよ、ショーン。』 『もう、いいトコみんな持ってっちまうんだから。サミシイヨー、ショーン〜』 『今度さ、ヒマな時間ができたらサッカー観に行こうよ。ね!約束したよ!』 『それじゃあね!×4』 ツー、ツー、ツー、ツー・・・・ ピー、 『もしもし?ショーン?えっと、デビットだ。さっきは時間が少ししか無くてあまり話せなかったから。その、やっぱりあなたがいなくて寂しかったよ。私たち兄弟そろって公の場に一度出てみたかったんだけどね。いや、兄弟、というのは役柄上のことだけれど、本当に、あなたと一緒にこういう場に参加してみたかった。いつかそういう機会に恵まれればいいのだけれど。みんなも残念がっていた。あなたは好かれているんだな、実感したよ。えっと、今は映画の撮影中だよね?そっちが明るい時にでもまた電話するよ。それじゃあ。』 ツー、ツー、ツー、ツー・・・・ ピー、 『ハロー!ビーン・ボーイ!俺だよ、オーリだよ!まったく、さっきはまだ話したい事があったのにヴィゴが無理やり電話とりあげんだもん。で、今掛け直したんだけど、そっちは夜だもんね、撮影も押してんだろ?ジェリーは売れっ子のくせにいくつも映画かかえてるからなー。結構無理とかさせるだろ、彼。オマケにN・ケイジだもんな。時間的余裕が無いってのが想像できるよ。そうそう、今日フェローシップが勢ぞろいしなかったのは本当、残念だよ。記念すべき日なのに。それはそれで残念だけどさ、でも、まあ、俺とあんたなら、さ、トロイのプロモーションできっと色んなトコ回れるだろうな。なんて、今から楽しみなんだよ。他のヤツらには悪いケド。それじゃヒマな時には電話してよ!じゃあね!バーイ!愛してる!んーっCHU!』 ツー、ツー、ツー、ツー・・・・ ピー、 『ハイ、ショーン。ヴィゴだ。さっきの留守電は聞いたかい?皆本気でしゃべってたぜ。プレミアは無事に終了したよ。私も・・年甲斐も無くはしゃいでしまった。もしアンタもこの場に居たらなあ、なんて思ったりもしたよ。思う度に、少し虚しい自分に気づくんだがね。その・・元気かい?最近大作続きで順調なのは喜ばしいけれど、ちゃんと休めているか?お嬢ちゃん達にはマメに連絡してるか?まだアメリカで撮影が続いてるんだろう?このプレミアもしばらくあちこちで続くけれど、落ち着いたら会わないか?もちろん撮影がオフの日に。・・また連絡するよ、おやすみ、ショーン。』 ツー、ツー、ツー、ツー・・・・ 今度こそ電話が途切れる。ショーンは目を覆った。 嬉しい。 大人気ない自分の態度が随分馬鹿らしく思えてくる。そして自分は何て幸せ者なんだと思う。こんなにも、自分を想ってくれる素晴らしい仲間と巡り合えた。 これは、そうそう体験できるものではないだろう?心から神様に感謝したい。 「・・・ショーン、君は幸せ者だ。どうしてもっと早く気がつかなかった?」 思わず1人ごちる。電話を額にあて、心の中で感謝した。『ありがとう』と。 自然に笑みがこぼれる。そうして何度も何度も繰り返し留守電を聴いた。ふと気がつくと夜中の3時を少し回っていた。 「おっと。明日も早かったっけ。」 名残惜しげに電話をテーブルに置くと明かりを消した。目を閉じると仲間達の顔が浮かんでくる。彼らがどんな顔でこの留守電を入れてくれたのか。そして幸せをかみ締める。明日一番で、いや、それでは夜中になってしまう。昼頃、もしくは夕方ごろだと大丈夫かな?誰に、どんな返事をしよう。 せめて、夢の中で皆に会えるといいのだけれど・・・・ そうこうしている内に自然と目が閉じる。静かに寝息を立てているその寝顔はとても安らかで幸せそうだった。 どんな夢を見ているのか、それは彼だけが知っている。その笑顔が、物語っている。 |
後我来 RPSのつもりです。でもこんなの世間様に比べたら全然ヌルイんだろうなあ。かなり捏造しまくりだし。えっと、すみません。今はこれが精一杯。(名文句で逃げてみる)皆から愛されてる豆が好き。と言う事で。 LORのキャラカプは今アラボロとファラボロが争っているのだけれど、RPSは断然ヴィゴショが好きなんですよ。 まず2人のモエエピソードが盛りだくさん。2人とも独身・子持ち。で、それらを裏付けるような本人による証言(インタビュー)の数々。(笑)デビハムさんは既婚者で子供持ちですからねー。インタビューも少なめですからねー!!(何でだ!?ちくせう!)でもショーンとは仲よさげですし。王の帰還に期待しませう。 ええと、誰が何をしゃべっているのかは、まず集団での回しトークは、イライジャ→アスティン→ドム→ビリー→マッケラン→オーランド→ヴィゴ→デビット→ミランダ→リブ→ジョン=リス。の順番です。本人たちの感じが出てるでしょうか?RPSなんてほぼ初めてなんで。一応初めの留守電は、プレミア中に、誰かの電話で一斉に、交代交代で話していて、それ以降はひと段落した後、個人個人の電話でかけてる、という設定でゴザイマス。あ、一番書きやすいのはオーリです(笑)で、書きにくいのはデイジーちゃん・・・その、性格がまだ掴めてないで・・・もっとインタビューとかコメントがあったらなあ・・・ |