夢の続きは・・・


「ZZZZZzzzzz♪・♪・♪」

 ここはヴァチカン。某秘密組織である聖騎士団一味の基地の一室。
 地下にあるとある一室で、幸せそうな寝息が流れている。
 彼の名前はカール。半俗半聖の修道僧であり、兵器開発のエキスパート。他称ヴァチカンの秘蔵っ子。
 己の欲望の為ならば、時には戒律すらも破ってしまうというのはまた別の話で、とにかく、彼がその寝息をたてている本人であった。

 時はうららかな午後。火薬とニスと何やら怪しげな薬品の香りが充満しているこの地下の一室で、彼は幸せな夢を堪能していたのである。
 ところが、そんな彼の元へカツカツとブーツの音が近づいて来た。その人物はためらう事も無しにカールの部屋の扉を開け、遠慮無しに中へ入る。そして、

「おい、カール、起きろ。・・・起きろ!!」
「う?あ?・・・わぁ!」
 肩を揺さぶられながら、カールは一気に現実の世界へと引き戻された。
 そして声の主を恨めしそうに見上げる。

「・・・ヴァン・ヘルシング・・・・」
「お早う、カール。お休みの所悪いが、急な仕事が入った。武器の手入れは済んでるんだろうな?」
「お早う、じゃないよ!全く、せっかくイイところだったのに・・・あと一歩って所で目が覚めちゃったじゃないか!」
 ぷう、とふくれながらそっぽを向くカール。
「僧侶のくせにどんな夢を見てたんだ?一体。普段の行いが良ければ、夜にその夢の続きにありつけるさ。それで、俺の武器は?」
「・・・ブレードの刃は研いでおいたよ。」
「銃に新しいフックは付けておいてくれたか?」
「ついでにロープもより頑丈なヤツに換えておいたよ。大人4,5人位なら耐えられる。」
「Excellent!!」
 そう言うとヴァン・ヘルシングはふざけてカールの額に自分の額をゴツンとぶつけて軽く笑った。
「天才の頭はナイーヴなんだ。もっと優しく扱ってもらえないかな、Mr.ヘルシング。」
「わかった。次から気をつけるようにするよ。」
 そう言いながらヴァン・ヘルシングはカバンに次々と武器を詰め込んでいく。

「・・・急な仕事って?」
「ああ、ちょっとイタリアにな。」
「イタリア。近いね。」
「まあな。先週送り込んでいた偵察部隊からの定時連絡がないからちょっと調べてきて欲しいとさ。」
 歩きながら話す2人。
「ついおととい帰ってきたばっかりなのに。」
 そうしてカールはヴァン・ヘルシングの黒いコートを取るといささか乱暴に埃を払い、持ち主に手渡す。
「人気者はツライね。」
 それを受け取り、羽織るヘルシング。

 そうこう問答している内に2人は人気の無いドアまでやって来た。秘密の出入り口である。
「危険なのかい?」
 パンパンと帽子をはたき、手渡す。
「安全な任務なんてあると思うか?」
 それをかぶるとヴァン・ヘルシングはノブに手を掛けた。
「それもそうだね。ま、せいぜい死なない様にね。」
「・・・友人に対していささか冷たい送り言葉だな。」
 くるりとカールの方を向いて、ノブに掛けた手を引っ込める。

「そう?気のせいじゃない?」
「何だ。夢を台無しにしたのを根に持ってるのか?」
「べっつにぃ?どこぞの誰かさんと違って、許可が無けりゃ自由に外に出れない身分なんでね。」
「・・・しょっちゅう抜け出ししてるヤツが何を言うんだ。」
「それは濡れ衣ってヤツだよ。ヴァン・ヘルシング。」
 とぼけたような笑顔を浮かべる友人を眺め、ヴァン・ヘルシングは意味ありげにニヤリと笑った。
 その笑顔に何やらイヤな予感を感じるカール。
「・・・カール、俺が心配か?」
「・・・何で?」
「任務続きで、かまってもらえないのが寂しいか?」
 カールは眼をまん丸にして友人をしげしげと見つめた。
「あのね、いつの間にそんな自信過剰な人間になったのさ?」
「・・・お前と知り合ってからかな。とにかく、俺が留守でも研究は怠るなよ。お前の作ってくれる武器があるから、俺は今まで死なずにきたんだ。頼りにしてる。」
「・・・」

 いきなり真剣な話と目つきに変った友人に戸惑いの表情を浮かべるカール。
「こう見えて、頼りにしてるんだ。」
 そう言うと、頭ひとつ分小さな友人の肩に手を乗せ、軽く抱き寄せるとその額にくちづける。
「!!ヴぁ、ヴァン・ヘルシング!?」   
「すぐに帰って来るさ。じゃあな。戒律は守れよ!」
 顔を赤らめ、口をぱくぱくさせている友人を面白そうに笑いながら、ヴァン・ヘルシングは今度こそドアを開け、夜の闇に消えていった。

「・・・気をつけて。」
 ぼそりとつぶやいたその先にはもう誰もいない。風が ひゅう と鳴いて通り過ぎていった。
「まあ、ちょっとやそっとじゃ死ぬタマじゃないだろうな。」
 そう言って額に手を当てながら、カールは部屋へ戻った。

 今夜は良い夢を見られそうだ。
 まだわずかにぬくもりが残っているような感覚を覚え、笑顔で歩いていく。

 せめて、今日はお祈りをしてから眠ろうか。
 無事に帰ってこれるようにと、願いをこめて。

                                            END


 後我来
 ハイ。カールの可愛さが目に余ってしょうがなかった映画、『ヴァン・ヘルシング』です。既に次回作の噂も流れているこの映画。期待しちゃっていいんじゃないっすか!!??最近のハリウッドは、ヒットすれば続編、ってのは黄金パターンと化してますからね(中には2作目がやたらヒットする作品とかもありますが)。まあ、普段はお金至上主義のこのやり方も、こういう時には感謝です。
 とにかくカールが可愛かったです〜♪ハムさんが、またイイ演技してくれましたよね。ファラミアとのギャップがおもしろくて。やっぱ役者はカメレオン俳優が好きです!!あるインタビューで、ハリウッドの仕事は続けていきたいと言ってましたので、これからの活躍にも期待しています。
 ・・・そういえば、アニメ版のヴァンヘル、カール役の吹き替え声優さんが、おじいさん声の方だったのですが、アニメではおじいさんなのでしょうか?カールたん。