「・・・・・」 「〜♪」 しかめっ面で街中を歩く、背の高い、端正な顔つきをした黒スーツの男。 そしてその後を足取り軽く付いてくる、金髪で中性美人の黒スーツの・・・人間。 人気のいない路地まで辿り着くと、黒スーツの男は金髪の人物に詰め寄った。 「・・・どういうつもりだ?ガブリエル。」 「どういうつもりも何も、何処で何をしようが私の勝手でしょう?」 ガブリエルと呼ばれたその人は涼やかな笑顔で答えた。 「何故俺の後を付いてくる?目障りだ。」 「目障りだなんて、冷たいなあ、ジョン。一応アナタのおかげで今の私がいるんだから、少しは責任とってもらってもいいんじゃない?」 「!!よくもそんな事が言えるな。自分のした事を忘れたか?」 「それはコチラのセリフだよ、ジョニー坊や。この間の一件が起こる以前のアナタの行動をもう一度思い出してご覧。」 「!・・・・」 「むしろ感謝してもらいたいな。結果論から言うと、私が起こした一件で今のアナタがいるのだから。」 「・・・・・」 「世の中って不思議なモノだね、ジョン・コンスタンティン。」 細く整った眉を限界まで引き上げ、ジョン・コンスタンティンはふとニコチンが欲しくなるのを覚えた。だが、それを何とか思いとどめ、内ポケットからガムを取り出すと、口の中に放り込む。 「お前が何を考えてるか知らないが、俺に付きまとうな!!」 「それは・・・」 「うるさい!!そんなヒマがあるなら教会の掃除でもしてろ!!」 ガブリエルの言葉を遮り、大きな声で怒鳴ると、コンスタンティンは踵を返し、どかどかと足音荒く行ってしまった。 その後姿を見て、くすり、と唇に指を当てながら笑うガブリエル。 「・・・禁煙中でイライラしてるんだね。まあ、あのヘビースモーカーが一朝一夕で禁煙に成功する訳ないと思うけど。」 先日の一件以降、ガブリエルは以外にすんなりと人間社会に溶け込んでいる。以前同様、ハーフ・ブリードや信心深い人間達を相手に、教会で働いているらしい。ハーフ・ブリード時代のコネと徳の賜物だろうか。堕ちたとはいえ、あの大天使と同じ名前を持つ元ハーフ・ブリード。それなりに人間の生活を楽しんでいるようだ。 そんな新米人間の最近の楽しみは、コンスタンティン・ウォッチング。 彼を長い間見てきた者にとっては、この間の一件やそれ以降の彼に訪れた変化に多少なりとも驚いている。何が彼をそうさせたのか。そして神と悪魔の双方から(強烈な)アプローチをかけられている彼のその行方が。それがもっぱらの関心事なのだ。 「アナタはどうも、人間離れした連中を惹きつけるみたいだね。・・・煩わしいとは思うけど。」 コンスタンティンが消えた先を見ながら、くすり、と微笑んだ。 END |