歴史の影と映画


たまには真面目に語りましょうか
 ええと、たまには真面目な話を。  先日、N●Kを見ていたら、今度BS2などでアカデミー映画一挙公開。というCMを見ました。そこで西部劇のことがちらっと紹介されていたんですね。  確かに、ある時期、アメリカでは西部劇の映画がわんさかと作られていた時代がありました。ですが、単に流行っているから、というだけではないと思うのですよ。  その頃の西部劇、というと、大抵の場合、主役はアメリカ人、そして敵はインディアンである事が多いのです。もともと西部劇の時代というのは、アメリカの開拓時代の頃であり、アメリカ人が西へ西へと移動していった時代でした。しかし、ここでちょっと考えてみて下さい。
 インディアン、というのは元々コロンブスがアメリカ大陸をインド大陸と勘違いしてしまい(なのに毎年アメリカ大陸発見の日!とお祭り騒ぎしてますが、ネイティブの人達は複雑な心境なんでしょうね。)、それでそこに住んでいた人々を《インディアン》と呼んだのです。ですが、元々アメリカ大陸に住んでいたのはこの原住民たちです。白人たちは後から入ってきたのです。原住民たち・《ネイティブアメリカン》の人たちからしてみれば、白人たちは『侵略者』であった訳です。
 西部劇で繰り広げられる白人VS原住民たちは大抵白人たちの勝利で、原住民たちは野蛮で乱暴に描写される事が多いです。この様な西部劇が多数作られていた、というのは白人たちを《正義の人》の様に見せ、自分たちがしてきた事を正当化し、それを国民に植え付けた、ともとれるのでなないでしょうか。
 また、こういう考え方も出来ます。今でこそアメリカは『世界のアメリカ』ですが、この国が他の国に劣る事といえば、『歴史が浅い』という事が挙げられます。《西部劇》というのは、歴史浅いアメリカにとって、独自の文化のひとつ、とも考えられます。それで、映画の歴史の初期に、自国の文化を描いたと考えられます。日本も映画が作られた頃は時代劇ばっかりでしょう?西部劇はアメリカの時代劇なのです。

 さて、ここまで書きまして、私決して反米主義者などではありません(笑)
 アメリカに限らず、どの国だって2〜3000年も続いていれば、後ろ暗い事のひとつやふたつやみっつやよっつ・・位(そんな少なくないですけどね)持っているものです。日本だってイギリスだってドイツだって。大事なのは過去の過ちを認め、それを繰り返さない事。ではないでしょうか。しかし実際の所、《歴史は繰り返す》なんですね。ちょっと世界史年表を見てくだされば。争いの繰り返しです。争いが全て必ず悪い、とはいいません。ですが中には本当に一部の人間のエゴによる争いがあった事は事実です。100年後の年表って、どうなっているのでしょうね。
 映画には色々な世界の社会問題を扱っているものがあります。どんな問題?というのをここで逐一挙げるのも大変なので、あえて言いません。・・・ちょっと昔使った世界史の教科書とか資料集を取り出してみるのもいいでしょう。
 実際、毎年アウシュビッツなどを描いてる映画が公開されますよね。リメンバー・パールハーバー!ではありませんが、やはり歴史の闇も後世の人に残し、伝えていかなければならないと思います。が、『トータル・フィアーズ』はちょっとムカつきましたね。MフリーマンやJクロムウェルが出ていますが。まさかハリウッド映画で、アメリカで原爆を爆発させるなんて!!と思いきや、なんですか、あの描写は。ただの大地震ですか?爆発ですか?原爆ってあんなものじゃないでしょう!!あの映画で『原爆ってあの程度のもの』とは思われて欲しくないです。製作側のリサーチ能力はそんなモノじゃないはずです!原爆投下後の広島や長崎の様子や、放射能の人体に及ぼす影響。今なおそれで苦しんでいる人々がいる事を知らない訳が無い!知っててあえて描写をあそこまでにしたんでしょう。ヤだなぁ・・・!

 ではここで、映画をいくつかご紹介しましょう。歴史の闇を垣間見る事が出来る映画です。

裸足の1500マイル イギリスがオーストラリアを植民地下に置いた時のとある政策についての真実の物語が描かれています。・・・誰であろうと親子を勝手に引き離すなんて許されません。ましてや赤の他人が。親切の押し売り、大いなる勘違いとは正にこの事。自覚が無いってんで始末が悪い。オーストラリアの大自然が描かれていますが、雄大な自然がこれほど残酷だと思ったことはありませんでした。
アミスタッド スピルバーグ製作の映画。こちらは黒人奴隷貿易を扱った真実の物語。人を人として扱っていないその描写に、思わず涙してしまいました。しかし、驚いたのは、先生にこの映画のその後を聞いた時でした。ネタバレなので反転して下さい。→あの裁判に勝った黒人たちは、元いた国に返り、奴隷商になった。という事。ショック!!過ちを繰り返したのですね・・・ 
シン・レッド・ライン コレと同じ時期に《プライベート・ライアン》が公開されてました。この映画は派手さは無いものの、その代わり『戦争』というものの虚しさはこちらの方が良く描けていると思います。《Pライアン》は、兵士を英雄として描いているんですもの・・米国人受けする内容です。
 晴れ渡る南の島で行われる殺戮。そのコントラストが残酷ですが美しいのです。
ポカホンタス ネズミーアニメの異色作ですね。ネイティブアメリカンの少女と白人の青年との禁じられた愛の話。この映画が公開された時、やはり米国で物議がかもし出されたようで。その時のインタビューで、ドコかのお母さんが『子供にこの映画は絶対みせません!』とやたらしゃべっていたのを今でも覚えています。・・・見せないって事は、何かやましい事があるってコトですね。ネズミーがこの映画を作り、公開したその心意気に乾杯。
マジェスティック 『赤狩り』という言葉を聞いたことはありませんか?アメリカで社会主義者を取り締まった時期がありまして、その時の事をこう言います。名匠、エリア・カザンは赤狩りの際、仲間の名前を出す事で捕まるのを逃れました。(彼も被害者ですけどね)この事があって、彼がアカデミーで特別賞をもらった時、会場が、立って拍手する人、座って拍手する人、何もしない人、に分かれたのです。また、世界の喜劇王・チャップリンも赤狩りの被害者です。この映画でもその赤狩りの背景が少し描かれています。

とまあ、主なのはこの位で。あとはタイトルだけ挙げておきます。
 グラディエーター 戦場のピアニスト ライフ・イズ・ビューティフル 聖なる嘘つきその名はジェイコブ シンドラーのリスト 永遠と1日 カラー・パープル 夜の大走査線 セブン・イヤーズ・イン・チベット ボウリング・フォー・コロンバイン etc…人種差別やナチなど、挙げていたらキリがないですね。でも、また何か観たら増やすかもしれません。