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「ボロミア、あんた、甘い物は好きか?」 「?好きだが、それがどうかしたか?」 「いやな、どこかの国の習慣に、毎年この日に日ごろから感謝している相手にチョコレートを贈る、という習慣があるらしい。知ってたか?」 「ああ、それならファラミアから・・弟から聞いたことがある。毎年互いに好きな菓子を交換していたなあ。(しみじみ)」 (・・あのブラコン大将め・・イイ年こいてしかも男兄弟でそんな事を・・!!) アラゴルンは一瞬苦々しい顔を浮かべました。ボロミアはボロミアで、故郷に残してきた弟に想いを馳せていたのです。 「ま、まあ、いい。それでボロミア。私もあんたに何か贈ろうと思ってね。」 「え?わ、私にか?(何でまた・・)」 「野伏は非常用の携帯食として普段は持ち歩いているのだが、困った事にホビット達を裂け谷に連れて行く間に使ってしまった。」 「まあ、彼らの食欲は我ら以上だからな。」 「それで、チョコは渡せないがせめてもの気持ちを込めた贈り物があるのだが、受け取ってもらえるだろうか?」 『せめてもの気持ちを込めた贈り物』 人の良いこの執政家の御長男は、このテの言葉に弱く、すぐに じ~ん と胸に熱いものがこみ上げてきたのです。 「・・ありがとう、アラゴルン。あんたの気持ちがこもっているのなら、何だって嬉しいよ。」 その言葉を聞くやいなや、アラゴルンの瞳の奥が一瞬怪しくキラーン と輝いたのでした。 「では、今取り出すから少し目をつむって頂けるかな?」 実直なこの御長男は、こういうある意味ベタな仕掛けにも弱いのでありました。 ところが、 何やら目の前から怪しげな気配を感じ取り、本能的に危機を感じて目を開けると、何と!アラゴルンの顔が目前に迫っていたのです。 「ぎゃあ!!」 そう叫ぶと同時にアラゴルンの顔を手で押しのけます。しかし、アラゴルンも逃がしてなるものか!と無理やり顔を近づけようとします。 「あ、アラゴルン!!貴様、これは何のマネだ!!」 「いや、だから私の愛を込めたキスをプレゼントしようとな。」 「ふっ、ふざけるな!!」 「さっき『何だって嬉しいよ』って言ったじゃないか。」 「こんなプレゼントだなんて思わなかった!!」 「大丈夫、さっき(最後の)チョコ食べたばっかりだから甘いぞ。」 「ホビットじゃなくて、アンタが喰ったのか!!」 「ま、遠慮するな。」 「誰が遠慮なんかするか!!離れろ!!」 すると、ボロミアの背後からぬうっと白く長い手が伸び、アラゴルンを突き飛ばしました。 「大丈夫?ボロミア。」 後ろからレゴラスの声がしたのです。 「れ、レゴラスか!あ、ありがとう、助かった・・・・ ん?」 アラゴルンの束縛を逃れたボロミアがほっとして後ろを振り向くと、何やら唇に温かくてやわらかいものが当たります。そしてそれはほのかに甘いのでした。 目の前には秀麗なエルフのどアップが視界いっぱいに広がっています。(というかハミ出てます) その側で、突き飛ばされたアラゴルンは目の前の光景に茫然自失でした。 たっぷりと10秒くらい経ったでしょうか。この純真な御長男はようやく自分が置かれている状況を理解し、顔を真っ赤にしながら離れました。 「さっきね、ピピンからチョコを一かけもらったんだ。確か甘い物は好きだったよね?だから、おすそ分けに。」 レゴラスはまるで何事も無かったかのように涼しげに笑みを投げかけると、満足げに向こうへ歩いていきました。 丁度その頃、ヘンネス・アンヌーンでイシリアンの野伏たちと休息をとっていたファラミアは、ふと何かとてつもなく恐ろしい事が遥か遠くの(愛しい)兄に起こっているような(ものすごく)嫌な予感に襲われました。 彼は洞窟の奥まった場所で1人、何やら包みを手にして座っていたのです。それは、毎年今頃になると兄に贈っている菓子の包みでした。もちろんファラミアのお手製です。今年は兄が側にいないのですが、毎年の恒例行事なのでつい、忙しい合間をぬって用意していたのでした。 その包みを握り締めたまま、ファラミアは外へ出て、兄がいると思われる北の方を眺めました。 「あにうえ~、このファラミア、いつも兄上の御無事を祈っております・・・」 自分を納得させるかのように呟きます。 どんな類の無事を祈っているのかここではあえて触れませんが、神様だってどんな願いも逐一叶えている訳にはいかないのでした。 (ただ1人を除いては)まったくめでたくなし |