お題其の3!!

お題はコチラのサイトさまから借りました。


1.詩人
2.きょうだい

「まこと、あの御兄弟は仲が良いですな。」
「歳は5、6つ離れているらしいが、そんな風には見えぬな。お姿もよく似ている。」
「まったく。見ていて、こう、頼もしい感じがしませんか。デネソール様も良い御子を持った。」
「・・・この様な時世に生まれながら、ああも健やかに成長なさるとは。」
「本当に。」

 城の片隅で誰かが囁く。話題の当人達は、城の狭間を並んで歩いていた。
 ボロミアとファラミア。現執政、デネソールの息子達である。

「ファラミア、今日は天気が良くて気持ちいいな。ベレンノール野があんなにもはっきりと見える。」
「そうですね。風も心地良いです。」
「こんな日は執務なんか放り出して、早駆けにでも行かないか?」
「…こんな良い日は、早々に執務を片付けて、早駆けに行きたいですな。」
「…言うではないか。」
 ボロミアは弟の方を恨めしそうに見やった。
 そんな兄の視線はどこ吹く風で、ファラミアは気持ち良さそうに背伸びをする。
 風がそよいで、そのゆるやかな金髪を揺らした。

「私も手伝いますから、午後は外に出かけましょう。」
 にっこりと微笑むファラミア。部下の前では決して見せない笑顔だ。
「書類仕事はどうも性に合わぬ。」
「知ってます。だから、手伝うと言ってるではないですか。」
 弟は何としても、兄に仕事をさせたいらしい。
 ファラミアは兄の肩に手を回すと、くるっとUターンさせた。
 眉をひそめながら、不承不承に進むボロミア。
「兄上、そんな顔をしないで下さい。せっかく晴れた空も雲ってしまいます。」
「その様な雲は見えぬがな。」
 そう言って天を仰ぐボロミア。柔らかな日差しが顔を照らし、翡翠の様な瞳が一層美しく光る。

「曇るのは天の空ではありません。」
「? どういう事だ?」
「私のここが、」
 そう言うとファラミアは、自分の左胸の辺りをトントン、と叩き、「曇ります。」と、兄を見ながら告げた。

 驚いた様に目を丸くするボロミア。だが、その顔はすぐに苦笑に変る。
「まったく、お前は私を乗せるのが上手い。」
「自負はありますよ。何年一緒にいると思ってるんです?」
「お前が生まれてからずっとかな。・・あんなに小さかったのに、こんなになって。」
 そう言うとボロミアは弟の頭をくしゃくしゃと撫でる。嬉しそうに目を細めるファラミア。
「可愛い自慢の弟でしょう。」
「ああ、そうだ。私はどうだ?自慢の兄か?」
「私の自慢の兄上は、弟との時間を作る為ならば、苦手な仕事も喜んでこなして下さる、でしょうね。」
「もちろんだ。お前も手伝ってくれるんだろう?さっさと片付けてしまおう。時間がもったいない。」
 口の端を持ち上げながら、ファラミアの顔を覗く。交差する視線。すぐに弟の顔にも笑顔が浮かんだ。
「はい、ボロミア。早々に終わらせてしまいましょう。」

 そうして白の塔の兄弟は、肩を組みながら足早に城の中へ戻っていった。

3.黄金時代

 和やかな風が凪ぐ良く晴れた日の午後。
 領地から城へ赴いた執政が、狭間から石の街を見下ろしていた。
 その横顔は天上の輝きとは裏腹に、かすかに影が伺える。

「どうした?ファラミア殿。何か心配事でも?」
「陛下…」

 ハッとして振り返ると、薄い笑みを浮かべた王の姿があった。
「いえ、心配事など。」
「嘘はいけないな、ファラミア殿。王と執政の間に遠慮は不要だ。」
 「はあ…」とためらいがちに呟くと、ファラミアは口を開く。

「私のくだらぬ杞憂です。今、この国は平穏を取り戻しています。ずっと待ち望んでいた平和がようやく訪れたのだと、感じています。」
 そう、ずっとずっと、幼き頃より望んでいたものだ。
「ですが、つい、思ってしまうんですよ…この平和はいつまで、続くのだろうかと。」
「・・・・」
 どこか申し訳無さそうに眉をひそめるファラミア。
「…長すぎたんだ、ファラミア殿。我らが闇に怯えていた時間が、あまりにも。」
 平和に慣れていないのだ。それは、とても悲しい事かもしれない。

「永い歴史の中で、私たちが紡ぐ物語はあまりにも短い。」
「…」
「だが、後世に想いを繋げる事はできる。私達は、私達ができる事をすればいい。そして、後に繋げる事。」
 かつて、自分たちの父祖が託し、託されてきたたくさんの想いを、願いを、今度は自分達が繋げるのだ。

 そうすれば、きっと。


「…ようやく一仕事終えたと思ったら、まだ大事な仕事が残っていましたか。」
「ああ。私も君も、責任重大だ。」
「ええ。」

 そうして王と執政は少しだけ笑う。
 二人を巡る様にするりと風が通り過ぎた。
4.不幸
5.指輪の本
6.書簡体小説
7.街のうた
8.無韻詩
9.魔法の島
10.ファンタジー

 平和の光が、街を照らす。
 まばゆい光が、どこか、痛い。
 あの光はかの人を思い出させる。
 太陽のごとく輝く髪、相手の心を溶かす微笑み。

 夢でも幻でもかまわない。
 切に、願う。
 会いたい。話したい。触れたい。

 ボロミア。
 この想いは何処へ届くのだろうか。
 願わくば、君の元へ。
 



あとがき
2・きょうだい:久しぶりにイチャこく兄弟が書きたかったんです。
 ファラミアの口調がちょっと生意気なのは、映画よりまだ若い頃の2人を描いたからでっす。
 20代後半位だとお考え下さい。

3.黄金時代:黄金時代=平和な時代、と解釈して書きました。
 王様ゴルンと執政ファラミアです。・・・うわ。 この2人が仲良くしてるなんて、 自分で書いてて変なカンジです…
 人類の歴史だって、争いの繰り返しですからねー。ちょっと複雑な気分です。

10・ファンタジー:ファンタジー=幻想 として書きました。これでもアラボロです;
  どうも指輪について色々知ってしまうと、ハッピーなアラボロは書きにくい・・・
  変な所にこだわってしまうので、ハッピーなアラボロを書こうと思うと、シチェーションが限定されてしまうんですよ・・・あの2人が一緒だった時間って、結構短いですからね。しかも旅の途中だし。