1.合格 「いいか?メリー、ピピン。肘から下を、そして手首を使うんだ。じゃ、メリーから、1,2,3・・・」 「よっ ほっ とうっ!」 「よし、その感じを忘れるな。次は、ピピン。いくぞ、1,2,3・・・」 「えいっ とうっ やぁ!」 「よし!合格だ。二人とも、飲み込みが早いな。」 そうしてボロミアはその大きな手で2人の頭をくしゃくしゃとなでる。顔を見合わせて嬉しそうに笑う2人。 「では、明日からもう少し高度な練習をするぞ、大丈夫か?」 「まかせてよ!ボロミアさん!」 「そうそう、その内ボロミアさんがスカウトしたくなる位強くなってみせますって!」 「ふふ、楽しみにしてるよ。君たちサイズの服と鎧を用意しておこう。」 そう言ってボロミアも嬉しそうに微笑んだ。 2.カルシウム | 「アラゴルン、パイプ草のやりすぎは体に毒だ。少し控えたらどうだ。」 「アラゴルン、旅の途中とはいえ、せめて体を拭くとかしたらどうだ?不衛生だぞ。」 「アラゴルン、食事はもっとゆっくり食べたらどうだ?その方が消化がいい。・・・それに好き嫌いはいかんぞ。いい年なのに。」 「アラゴルン、・・・」 「アラゴルン、・・・」 ・・・・・ ・・・・・ ふうっ とアラゴルンはため息をもらします。 「ボロミア、アンタは何でそう、いっつもいっつも文句ばかりなんだ?カルシウムが足りないんじゃないか?」 「あんたがもう少しちゃんとしていれば私だって文句は言わない。」 「アンタの基準でモノを測らないでくれ。放って置いてくれないか?」 「放っておけないから言っているのだ!」 「・・・・」 「・・・・!!」 ボロミアは口を押さえましたが、出てしまった言葉は引っ込みがつきません。後の祭りってヤツです。それを見逃すはずのないアラゴルンはキラーンと目を輝かせました。不適な笑みも浮かべています。 「ボロミア、言ったな?私の事が放っておけないか。と、言う事は、私の事が気になる、という事か?」 にやにやと笑いながらボロミアに迫るアラゴルン。 「な、そ、つ、都合のいい解釈をしないでくれ。そ、その小さい人たちに示しが・・・」 たどたどしく言い訳をしながらじりじりと下がってゆくボロミア。四つんばいになって追い詰めるアラゴルン。 その人のことが本当にキライだったら注意なんてしないでしょう。アラゴルンはそれを知っています。ボロミアは・・・きっと気づいていない事でしょう。 誰かに心配されるのは案外悪くは無いものだと味をしめた馳夫さんでした。 3.貴殿 | 「やあやあ、我の名はメリアドク・ブランディバック!シャイアいちの勇者なるぞ!!貴殿の名は何と申されるか!」 「えっと、えーっと、メリー、《きでん》って何?」 「・・・勇者ごっこもマトモにできないのかよー、ピピン。きでんってのは、えっと、キデンってのは・・・」 「フロドに聞きに行こうか。」 「ウン、そうしよう!」
4.前後 | 旅の途中、ボロミアは割と退屈することなくその時間を過ごせた。 と、いうのも新しい友達となった小さな人がボロミアの事を気に入ったらしく、歩いている途中、ボロミアによく話しかけていたから。 「ねえ、ボロミアさん」 「あのね、ボロミアさん」 ボロミアの腰ほどの背丈しかないこの小さな人は、2人揃ってボロミアの前後左右をせわしなく動き回り、身振り手振りを交えながら質問したり、自分たちの事を話してくれる。 ボロミアに笑顔を向けながら話すこの友人たちを間違っても踏んだりしない様に、歩幅をゆるめ、笑顔を返し、今日もボロミアは歩いていくのであった。
5.駱駝(ラクダ) | 「兄上、駱駝という動物を知っていますか?」 ある日弟が聞いてきた。 「いいや、知らないが・・・それはどういう動物だ?」 「身の丈は洞窟トロルほどもあって、森の中で暮らしているんです。耳は天に向かって伸び、一つしかない目は夜でも昼でもらんらんと光って、鋭い牙と爪を持った獰猛なヤツです。」 「・・・それは恐ろしいな。」 「幸いこの界隈には生息していませんが、寒い所によく現れるそうです。もしもの時は気をつけて下さい。」 −数年後− 旅の仲間達はカラズラスに向かっていた。次第に寒々となってくる森の中。 「大分寒くなってきましたね、ミスランディア。駱駝に気をつけないと。」 灰色の魔法使いは一瞬自分の聞き間違いかと思った。 「スマン、ボロミア。今何と言った?」 「いえ、ですから、辺りが寒くなってきたので、もしかしたら駱駝が現れるかもしれないと思って。」 はて、この馬鹿正直な長男は一体誰に何を吹き込まれたのか。 しばらくすると仲間達の、何とも場違いな笑い声が響いてきたのであった。
6.恋 | 「ねぇ、ボロミアさん、ボロミアさんの初恋はいつですか?」 ある日突然ピピンが尋ねてきました。 「は、初恋!?いや、それは・・・」 ほのかに頬を赤らめてしどろもどろになるゴンドールの大きな人。側を歩いていたメリーも話に乗ってきます。 「あ、ソレ僕も知りたいな。恋の話の一つや二つ、ありますよね?教えて下さいよ、ボロミアさん。」 結局、互いに教えあう、という事で意見が合致しました。 互いに耳に口を寄せ、ぼそぼそと小さな声で話し始めます。 そんな様子をものすごく羨ましそうにチラチラと見やっている馳夫さん。しかし、野伏の耳でもその秘密の会話は聞けなかったのでした。 しばらくすると、 『へえー!』 と驚きの声をあげるホビット2人。 思わず地面の草をむしり始める馳夫さん。 その一方、我関せず、といった風に辺りを警戒(してるフリを)していたレゴラスは、誰にも見られない様に にやり と笑ったのでした。 エルフイヤーは地獄耳。
7.つまようじ | 旅の途中、食事の後になってアラゴルンがつまようじを使って(人目もはばからず)シーハーやっていると、その様子をいぶかしげにボロミアが眺めている。 「・・・どうかしたか?ボロミア。」 「いや、何をやっているのかと思って。」 「?何って、つまようじで歯に引っかかったモノをだな・・・」 「つまようじ?その小さな、木でできてるやつか?」 「・・・つまようじは木で出来てるものだろう?」 「つまようじといえば、銀で出来てる物だと思っていたのだが。木ではすぐ折れてしまうだろう?・・・違うのか?」 「・・・・(変なところで世間知らずだな、この坊ちゃんは。と、いうかあの家では何て物を使ってるんだ!!・・・悪気は無いのだろうが・・)」 ・・・何か釈然としない馳夫だった。 8.婿 | 「お前の婿殿になるのは、どんな人だろうね。」 ある日、セオデン王は愛する姪にこう尋ねた。 エオウィンはびっくりして目を開く。 「な、何をいきなり聞かれるのです?」 「エオウィン、我が姫。私はお前を娘のように思っているんだよ。親というものは自分の娘が年頃になると、そういう事に関心がいくのは当然だと思うのだがね。」 「そ、そんな事、急に申されても・・・」 「では、あくまでも例えばの話だが、セオドレドの様な男とエオメルの様な男ではどちらが好みかな?」 まだ幼さが残る可愛い眉を少し歪め、エオウィンは頭をひねる。やがてニコっと伯父に向かって微笑むと、元気にこう答えたのであった。 「私、殿のような方が好きですわ。」 マーク王はにっこり笑うと、愛する姪の頬に優しく口づけた。 9.接着剤 | 「うわっ・・・馬は、走らせると結構揺れるな。バランスが取りにくい・・・」 「馬に乗るんじゃなくて、馬と一緒になって走る!その位の気持ちでないと。」 2人の金髪の青年が乗馬の稽古をしている。 「しかし、セオドレド、揺れるものは揺れる・・・っと。何か、こう、コツはないのか?」 「コツ、ねぇー」 そうしてセオドレドは少し考え込むと、ぽんっと手を打った。 「『人馬一体』という言葉がある。自分と馬とがガチっとくっついているような感じで。何が何でも離れないぞ!、という気持ちで乗ってみろよ。」 「・・・お前はそんな風に教わったのか?」 「・・・そんなに意識はしなかったかな。普通に乗れたぞ。ロヒアリムだしな。」 「(そういう問題か?)わ、わかった。やってみるよ。」 そのアドバイスが効いたかどうかは定かではないが、ゴンドールの総大将は、まるでロヒアリムの様に巧みに馬を操る。そんな噂が後のローハンで流れたという。 王子曰く、 「私のおかげさ。」
10.直情的 | 人の上に立つ者とは、冷静で思慮深い、それでいて腕もたつ人物だと思っていた。 しかし、一国の総大将であるこの人は、意外に直情的な人なのだと思った。 実際彼はよく感情を顔に表すし、情に流されやすく、頭が参ったら体を役立てるべし、などと言う人であった。 弟がいると言ってたが、彼のホビット達に対する接し方を見てるとそれが伺える。良い、兄でもあったんだろうな。 そして、笑顔が良く似合う。 あの笑顔に家族も部下も人々も、惹かれるのだろう。皆彼が大好きなのだろう、そう思う。 ・・・あの無愛想な父親からよくこんな息子が育ったな。 彼が隣に座ってくれるのなら、どんなに頼もしい事だろう。 うっすらとそんな想像をしながら、笑みを浮かべて歩いていく。 |
前々から○○のお題、というものに憧れてましたが、
100なんて、無理、私ムリ。と手を出せないでいたんです。そしたらコチラは10ずついくつかのグループがありまして、
10ずつなら無理なくできるかなあ、と思い立ち、チャレンジしてみました。今度はLOR編です。ようやく全部書けました・・・・ 1:先生ボロミアにお弟子なホビッツ。毎日食前にお稽古してあげてればいいなあ、と。 2:すっかり夫婦の会話ですね(笑) 怒りっぽいのはカルシウムが足りないからだ、と言うじゃないですか。 私、毎日牛乳飲んでるのに、気が短いとよく言われます。 3:小さい頃、勇者ごっこするメリピピでっす。 4:ボロミアのさりげない優しさ。を表してみようかなあ、と。今度はちゃんとホビッツ&ボロを書いてみたいです。 5:こんな事を吹き込んだのは貴方の弟子です、ミスランディア。ファラミアとしては、ちょっとからかっただけで、 まさか鵜呑みにするとは思わなかったでしょう。でもそれを本気にするのがボロミアだと思っています。 6:ボロミアの初恋・・・案外母親似の年上の女官だったりするんじゃないですか?物静かなタイプが好みそう。 私が全身全霊をかけてお守りします。とか言いたくなるような。私の勝手なイメージですけどね。 7:ハハハ。執政家では1人一本、銀のつまようじが使われてたんですよ。お好みで金とかプラチナとか真珠とか。 8:一番のお気に入りかも。セオデンはそれこそ娘のようにエオウィンを育てたのではないかなあ、と。 もちろんエオウィンも父親のように思っていたでしょう。それで、年上の従兄弟や兄などに囲まれて育った彼女は、 年上好みなのでは?初恋はセオドレドに1票。案外ボロミアもタイプだったんじゃないかなあ、と。 エオメルも言ってたじゃないですか、原作で。ボロミアはロヒアリムの様であった、って。 9:初めてまっとうにセオドレドが登場!(10代後半、乗馬を習う為にボロたんローハンにプチ留学中) 私の勝手なイメージで、セオドレド=坊ちゃん系、ボロミア=天然系 のお姫様コンビ。 この跡取りコンビはまた書きますよー!・・・ ロヒアリムってこんなイメージです: 「いやー、乗馬がお上手ですな。」 「ロヒアリムですから。」 10:アラゴルン視点のボロミア考察です。ボロミアは書類仕事とか頭脳労働が苦手そうなので、執政になってたら、ファラミアと二人三脚で良い仕事してたんじゃないかしら。 |