「兄上、」 呼ばれて振り返ると弟が立っていた。 その瞳に憂いを湛えながらボロミアに近づく。 「ファラミア。いつ帰ってきたのだ?」 ボロミアは弟の姿を見ると笑顔を浮かべた。その腕には白い包帯が巻かれている。 「先ほど帰って参りました。そしたら怪我の事を聞いて・・・」 居ても立ってもいられず、着替えもそこそこに兄のもとへ駆けてきたのだ。 「たいした事はない。敵の刃が掠っただけだ。薬師が大げさに手当てするものだから。」 そう言って手をぶんぶんと振ってみせる。 「兄上、小さな怪我をあなどってはいけません。闇の者達が使う武器には何が仕込まれているのかわからないんですよ!」 少し険しく眉をひそめながら兄をいさめるファラミア。 こうでもしないと兄はきかないから。 兄にその様に言ってくれる人はごく限られているのだから。 そして、私自身がそうしたいと望むから。 「わかっているよ、ファラミア。それより、お前の方は何ともないか?」 「大丈夫です。今回の偵察は滞りなく済みました。」 「そうか、よかった。」 ほっと胸を撫で下ろすボロミア。 そして、その様子を見て嬉しく思うファラミア。 本当ならば共に居たい。 側についていてあげたい。 しかし、それはできない。それは、私のわがままで自己満足に過ぎないのだから。 「さ、立ち話もなんだから食事にしよう。お前も早く着替えてこい、一緒に飲もうじゃないか。」 ぽん とファラミアの肩をたたき、歩き出す。 「・・・」 歩きながら窓の外に目をやるファラミア。それを見てボロミアも窓の方へ目をやった。 そこにはまんまるい月が静かに佇んでいた。 「きれいな月だな。」 「そうですね。・・・ボロミア、今夜はこの月を見ながら一杯やりませんか?」 「そうだな、それがいい!さ、行こう。」 弟の背中を楽しげに押しながら城内を走っていく。 普段は仏頂面の多い次男殿も、兄といる時だけは人が変わった様に顔が柔らかくなる。 「久しぶりに飲み比べでもしましょうか?」 「ああ、面白そうだ。まだまだお前には負けないぞ。」 「ふふ、ボロミア。人は毎日変化し続けるものですよ。」 まるで幼い子供のようにじゃれながら、兄弟はひとときの時間を共に過ごすのであった。 おわり |
あとがき ハイ、こちらも久々〜な執政兄弟です。 以前、ご好意に甘えて指輪オンリーで買ってきてもらったボロ受漫画を読んでいたら、無性にファラボロが書きたくなりました。ありがとう!!津月さん!! そういえば『王の帰還』のDVD発売がそろそろですね。・・・とうとう最終が出るんですねーサビシイなー もちろん本当に楽しみなのはSEEの方ですが、どんなシーンが追加されてるんでしょうねー。ファラミアとゴルンのシーンとかあるんでしょうかねー 誰がコメンタリーに出るんでしょうかねー 執政家シーンでのコメンタリーが今から楽しみ☆ 特にハムさんとノブルさん。・・・・ま、豆はいるのかなあ?出てないならむりかなあ?いや!でも回想シーンでちょっと出てたぞ!!クレジットもされてたし・・・難しいですねぇ。 ↑これ書いたのが、SEE発売前だったんです。 今度はもちっといちゃこいてる兄弟書きたいです。 それでわ!! |