「ーーっっ!!何度言ったらわかりやがる!この毛むくじゃらァ!!寝ぼけてオイラを食いやがるなんて、見ろ!
大和 わぉん 柔らかな日が照り、のどかな趣を取り戻した神木村に怒声が響く。 妖怪退治を終え、休みがてらに昼寝をしていたアマテラスとイッスン。所が、寝ぼけたアマテラスが側にいたイッスンをくわえてしまったのだ。 くわえると言っても ぱくん と口の中に入れてしまうのだ。それも今に限った事ではない。 「何ィ?ついウッカリ、だと?ウッカリで済む程世の中甘くないんだよォ!!」 度重なるヨダレの刑と気持ち良く眠っていたのを邪魔され、今回のイッスンはいつもより機嫌が悪い。 しかも、目の前の目覚めたての半人前の大神様は、いつもの事だと言わんばかりのスッとぼけ顔。 …もっとも、本人は至って普通にしているだけなのかもしれないが。 とにかく、その日のイッスンは特に機嫌が悪かったのである。 「ったくよぉ。もうオメェみたいなだらしない神様かぶれなんて知るかっ!!後は勝手にしやがれっ!!」 アマテラスの鼻先でひときわ大きな声で怒鳴ると、ヨダレで濡れたまま、ぴょんぴょんと跳ねながらその場を離れていった。 あぉ… 小首をかしげながらアマテラスは小さく鳴いた。 「ったく。せっかく人が気持ちよく眠ってたってのによぉ・・・」 あの後村を出たイッスンは、神州平原の片隅にある道場の庭先にある池で体を洗っていた。 二人の活躍のおかげでタタリ場から開放された神州平原には、穏やかな風が凪いでいる。優しい陽の光を浴びた池の水もまた 心地良く、イッスンはしばらくの間小さな水音をたてて泳ぎを楽しんだ。 ふと、イタズラ心で水をひっかけてやろうと考えたが、すぐにその相手がいない事に気がつき眉をひそめる。自然と重い空気が 口から漏れた。 「…少し、言い過ぎたかァ?」 服を乾かしながら草原に腰を落とすと、腕を組みながら一人ごちる。 疲れていたのはお互い様だし、いや、実際戦闘をこなしていたのはアマテラスである。本来の半分の力も取り戻していない 大神様。好きで石っころになっていたわけでも無い事は十分承知のはずだった。 そんなアマテラスと一緒に旅をしたいと言ったのも自分だったし、出会ってまだ日は浅いがアマテラスのボケっぷりも 脳天気っぷりも既に十分知っていた(この先もっと知る事になるのだが)。 「…っちぇ。大人気無いのはオイラの方かよ。」 ごろりと仰向けになり、空を仰ぐ。 雲が形を変えながらゆっくりと流れていった。 きっと、他所には呪いと暗雲が立ち込めるタタリ場がまだまだあるのだろう。 そして、大神・アマテラスの力が必要とされているのだ。 自分にナカツクニを救う義理は無い。だが、一度乗った船を降りてしまうのは、 「カッコ悪い、よなァ…」 そう呟いた途端、視界一杯に何かが飛び込んできた。 「うわぁっ!!」 慌てて身構えると、 わうっ! 「あ、アマ公…」 そこにはアマテラスが尻尾を揺らしながら ちょこん と座っていた。 その足元には小さな笹の葉の包みが置かれている。 わおっ 「何?め、迷惑をかけた、お詫び、だとォ?な、オマエにしちゃあ、気の利いた事するじゃねぇか。」 あうん! 「わかったよ、今開ける…ん?こりゃあ…」 笹の葉を開くと、そこにはおにぎりがあった。 だが、普通のおにぎりとは少し違う。表面のあちらこちらに肉球の跡があるのだ。 「コレ、オメェ…」 わうわうっ!! 「クシナダの姉ちゃんに頼んで手作りした?」 わうんっ! 幾分自慢げに、そして誇らしげに佇むアマテラス。 ぱたぱたと尻尾の振りが速くなった。 「…ちゃんと手ェ洗って作ったんだろうな?」 あう♪ 「…仕方ねェな。こ、米がもったいないから食ってやらァ。」 ぱくり。 塩っからい。それに具も無い。よく見ると白い毛が米粒の間から覗いている。 あおん? 「…」 ごっくん。飲み込んだ後、気づかれないように毛を取り除くと、むしゃむしゃとおにぎりにかぶりつく。 やがて最後の一粒まで食べ終えた。顔を上げると、若干不安そうなアマテラスと目が合う。 「…美味いじゃねェか。さすが、クシナダの姉ちゃんが作った米だ。…何だ、その。ありがとよォ、アマ公。」 わうっ!! 嬉しそうにアマテラスは一声上げた。 「さてっ!腹も膨れたし、先へ進むかァ!!」 あおん? 「はぁ?怒ってないのかって?てめぇの目は節穴か?この毛むくじゃらァ!オイラのこの顔が怒ってる様に見えるなら、 お前よっぽどモウロクしてる事になるぜェ!…まぁ、何だ。さっきはオイラも少し言い過ぎた。すまねぇな、アマ公。」 きゃうっ! 「ハハ、良い事言うじゃねぇか、アマ公。旅は道連れ二人連れ。持ちつもたれつ、気長に行こうぜィ!」 あおぉ〜〜んっ! 大きく一声いななくと、アマテラスはイッスンを頭に乗せ、走り出した。 そうだ。互いに半人前の身なのだから、気楽に歩んで行けばいい。 晴れの日ばかりじゃないだろう。雨風雷雨に見舞われる、そんな日だってきっとある。 時には間違う事もある。傷つく事もあるだろう。でも、 だから旅は、楽しいんだ。 向い風を顔に受けながら、緑の丘を駆け抜けていくアマテラスとイッスン。 旅はまだまだ、続くのだ。 終 |
あとがき イスアマーー!! 大変でした。イッスンの口調が。好きなんですよね、江戸っこみたいな勢いがあって小気味いい台詞まわしがwその点では ウシワカより気を使います。イッスンの口調。 どんなだったか確かめようにも、布教のためソフトを貸し出し中だったのでぃす。 それでも何とか書けました。イッスン&アマテラス。出会ってまだ間もない頃です。神州平原に大神降ろしした後です。 アマテラスは復活したばかりで、筆技もほとんど使えない。イッスンも天道太子の跡継ぎ、のはずなのに修行を放り出して 半家出人の様な状態。半人前同士なんですよ、最初は。だから互いに協力しあって行くんですね、この先。いや、どうも ゲーム作りに関わってしまうと、イッスンはチュートリアルの役も兼ねてるしなぁ…とか浮かんでしまう。イカンイカン。情緒が無い。 とにもかくにも、イスアマはイッスン大好きアマテラスとボケボケ大神様が心配でしょうがないちょっとオカンが入ってる 様なイッスンで進んでいきます!また何か書きます!やっぱまた大神やりたくなったなあw 所で、ウシワカと政宗(バサラ)の英語っぷりは、いい勝負ですよね。 061209 |