once upon a time


◆タンデムで行こう

狩魔: うーむ。ワガハイとした事が、これでは裁判所までギリギリの時間だな…
万才: 豪くん、大変だよ
狩魔: どうしたのだ?一柳
万才: 裁判所へ行く途中で交通事故があって渋滞だって連絡が
狩魔: 何だと!?後30分で審理が始まってしまう!
万才: だーかーら、ホラ、乗ってよ
狩魔: …キサマのバイクか?
万才: ハイ、メット
狩魔: …ワガハイはバイクの事はよくわからんが、これは違法改造…
万才: まっさかー。せいぜいグレーゾーンだよ
狩魔: キサマ、仮にも法に携わる人間が違法など
万才: ゴチャゴチャ言ってないで早く乗りなよ。
    遅刻してペナルティもらったら、カンペキな経歴にキズが付いちゃうよ!?
狩魔: ム。…安全運転で行けよ、一柳
万才: …あ。豪くん、ソコダメ。くすぐったい。もうちょっと下の方掴んでくれる?
狩魔: おい!本当に大丈夫なんだろうな!?
万才: 大丈夫だって。じゃ、行っくよー
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万才: ハイ、到着ー。結構ギリギリだね
狩魔: …
万才: 豪くん、着いたよー
狩魔: …
万才: 豪くん…ボクと離れ難いのはわかるけどさー。早く行かないと遅刻しちゃうよ?
狩魔: だ、誰がキサマなんかと!!それよりも、先程はアキラカにスピード違反だったではないか!
万才: 豪くんの為にちょっとムリしちゃったかな?あれ、ちょっとクチビルが青紫色だね
狩魔: い、一柳。後で…覚えておけ…
万才: うーん。ボクもこの後公判あって、直帰するんだよね。明日でもいい?
狩魔: お、お前というヤツは…
万才: ホラ、後10分だよ!
狩魔: っ! と、ともかく……助かった
万才: え!今、何て言ったの?豪くん!?
狩魔: うるさいっ!!


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ヘヴィなスピードと、ギリギリスレスレのライン取りで気分は絶叫マシンに乗ってる気分だったんです
で、結構がっつり万才をぎゅっと掴むというか抱きしめてたに近い感じでタンデムしてたんです。

◆キモチの問題

巌徒: あのさー、豪ちゃん。30分でいいからエアコンつけない?
狩魔: 暑かったらこの部屋を出て行けばいいだろう
巌徒: って言うかさ。この暑さでよくそのガチガチとヒラヒラ着てられるよね
狩魔: …ワガハイとて暑くない訳ではない
巌徒: その割には涼しい顔、してるけど?
狩魔: 【心頭滅却すれば火もまた涼し】と言うだろう。暑さくらい気合でなんとかするのだな
巌徒: …気合で何とかできたら、苦労はしないよ…ねぇ、豪ちゃんさ、本当にボク達と同じ血が通ってるの?
狩魔: 暑さで脳でも沸いたか?ムダに口ばかり動かすとますます暑くなるぞ
巌徒: あぁ…こんな時に限って万ちゃんは外出中だなんて
狩魔: ならばさっさと署に帰るのだな。いい加減鬱陶しい
巌徒: ダメだよ!万ちゃんのハンコもらわないと帰れないんだから…って言うか鬱陶しいとかヒドくない?
狩魔: 思ってないから言っているのだ
一柳: 豪くん、入るよー
狩魔: 一柳。人の部屋に入る時はノックしろといつも言っているだろう
一柳: あぁ、ごめんごめん。また忘れちゃった
巌徒: 万ちゃん!!やっと戻ってきた!
一柳: ちょっと、海慈くん、あまりひっつかないでくれるかな。溶けちゃうよ
巌徒: ん?何持ってるの?
一柳: お土産のアイスキャンディー。懐かしいでしょ。ハイ、海慈くん
巌徒: ありがとうねー、万ちゃん。もう、この部屋暑くてさー
一柳: 豪くんも我慢しないでエアコンつければいいのに。ハイ、どうぞ
狩魔: この程度の暑さ、1人ならば不要なのだがな。3人もいるのではさすがに過密過ぎる《エアコンを入れる》
巌徒: …涼しい。そして美味しい
一柳: うーん、涼しい。暑いとやる気と作業効率が落ちちゃうよねー。で、海慈くんはボクに用事があったんだっけ?
巌徒: あー、あるけど、もうちょっと後でね
一柳: わかった
狩魔: …お前たち。それを食べたらこの部屋から出て行けよ
一柳: えー。経費削減の為に今日はここで残りの仕事しようと思ってたのに
狩魔: 馬鹿を言うな。却下する
一柳: 裁判官みたいなコト言わないでよ。検事のクセに
狩魔: キサマらがいるとワガハイの作業効率が上がらない。邪魔だ
巌徒: また眉間にヒビとか入れちゃって。ホラ、もうちょっとリラックスしなよ
狩魔: …キ・サ・マ・ら〜
一柳: あ、ダメだ海慈くん、逃げよう
巌徒: 了解!

その数秒後、狩魔検事の雷が午後の検事局を揺るがしたのでありました。


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ある夏の一日。以前書いた時よりは大分仲が良くなった頃を想定して呼び方を少し変えてみました。

◆the three

巌徒: 失礼しまーす。万ちゃん、今大丈夫?
一柳: ん?ああ、海慈くん。いらっしゃい
巌徒: 頼まれた調査、鑑識の結果が出たから持ってきたよ
一柳: ありがとう。どれどれ…ああ、やっぱり。
巌徒: どう?これで有罪取れそう?
一柳: バッチリ読みが当たってたよ。これもキミ達の懸命の捜査あっての事だねぇ
巌徒: それが仕事だからね。あ、仕事と言えばさ、万ちゃん。狩魔検事って知ってる?
一柳: …知ってるも何も、同期だもの。というか、検事局で彼の事知らない人はいないと思うな
巌徒: この間初めて事件が一緒になったんだけどね、危うく給料下げられるトコロだったよ
一柳: あぁ。それは検事の奥の手なのに。…海慈くん、何やらかしちゃったの?
巌徒: それがさー、ボクの態度がお気に召さなかったらしくて
一柳: まぁ、カレ、とっても真面目だから
巌徒: でも、優秀なんでしょ?
一柳: 優秀というかカンペキ主義者というか。お陰で去年の検事・オブ・ザ・イヤー逃しちゃったもの。
     2連覇、かかってたのになー
巌徒: 良いライバルが出来たって事じゃない。そうでないと張り合いないでしょ
一柳: まぁね…海慈くん、その様子だと結構気に入ってるの?
巌徒: あれ?妬いてる?
一柳: ちょっとだけね
狩魔: 一柳、いるか?
一柳: あれ、狩魔くん
狩魔: ム。キサマも居たのか
巌徒: …ごあいさつだね、狩魔検事。丁度今、キミの事をウワサしてたんだよ
狩魔: くだらん話などする暇があったら仕事に励むのだな
一柳: 捜査官と交流を持つのは、仕事の一環でもあると思うよ
狩魔: 現場以外での話など無用だ。そんなヒマがあったら判例集のひとつでも読んだ方がよっぽど為になる
一柳: 狩魔くんはマジメだなー
狩魔: 一柳、局長が呼んでいる。それと、巌徒。玄関先でキサマの部下が探していたぞ
巌徒: え?徹っちゃんが?
狩魔: 受付で一柳の執務室はどこかと聞いていた
一柳: 部下が一緒だったの?
巌徒: うん。運転してもらってたんだ。何か緊急の連絡が入ったかもしれないから、行くよ
一柳: またね、海慈くん
巌徒: 2人共、また捜査で会えるといいね。じゃ!

狩魔: フン。騒がしい男だ
一柳: でも、仕事はデキるよ。キミも一緒に仕事をしたなら、わかるだろ?
狩魔: …まぁ、そこらの刑事よりはマシかもしれん
一柳: 相変わらずスナオじゃないなぁ、狩魔くんは
狩魔: ムダ口を叩くな。言っただろう?局長が呼んでいる、と
一柳: おっと、そうだったそうだった。それじゃ、行ってくるよ
狩魔: 廊下は走るなよ、一柳
一柳: ホントにマジメだなぁ、狩魔くんは…

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 若かりし頃の三悪党。3人揃えてみましたが、一番書き辛いのは万才です。ちょっとおっとりめで、若干子供っぽく。
 ガントは『蘇る〜』とほぼ変わらないカンジで。豪は黒い頃の御剣をさらにキツめにした様なカンジで書いてます。
 才能ある者同士、きっとウマも合うはず!!と思いながらこれからもちょいちょいこの3人の話を書いていこうかなと 思いつつある今日この頃。例によって、『徹っちゃん』は馬堂さんでw

◆long time ago

巌徒: ちょっと、狩魔検事。待ってくださいよ
狩魔: ダマれ、ヘタレ刑事が。証拠は我々を待ってはくれないのだぞ
巌徒: わかってるけど、少し休みません?只でも連日の捜査で疲れてるハズでしょ?
狩魔: …言葉使いには気をつけたまえ、刑事。言葉の乱れは心の乱れ
     刑事フゼイがワガハイに対してタメ口など…フユカイだ
巌徒: フユカイって。言うねぇ。同い年じゃない、ボク達
狩魔: 年は同じかもしれないが、キサマとワガハイでは質が違う
巌徒: ホント、口が悪いね、狩魔検事。キミさ、トモダチ少ないでしょ?
狩魔: …キサマはワガハイを侮辱するのか?
巌徒: だとしたら?
狩魔: キサマの今月の給与査定、楽しみにしておくのだな
巌徒: ウソ!そんな権利まであるって言うの?
狩魔: ムロンだ。そうなりたくなければ黙って働く事だな。それがキサマらの仕事だろう?
巌徒: …そして警察が集めた証拠を使って有罪をモギ取るのがキミの仕事、ってコト?
狩魔: わかっているではないか。
    狩魔はカンペキをもってよしとする。その為にもカンペキな捜査が行われねばならないのだよ
巌徒: …やれやれ。そういうプロ根性、キライじゃないけどさ、もっと気楽にやらない?
    そんなヒラヒラガチガチした服とか着ちゃってさー。肩とかバッキバキになっちゃうよ?
狩魔: その減らない口を閉じたまえ、ガント捜査官。本当に給与査定がドラマティックな事になるぞ!
巌徒: ハイハイ、わかりましたよ、検事殿

署を出ようとする二人。その出入口で係員に呼び止められる。

係員: 巌徒刑事。緊急の電話です
巌徒: あ、はいはい。もしもし?ガントだけど…ああ、徹っちゃん、そんなに慌ててどうしたの?
    え!?ふんふん、そう。良くやったね、すぐに行くよ
狩魔: どうかしたのか?
巌徒: 部下からの連絡で、凶器が発見されたってさ。容疑者の家の近くの川辺でね
狩魔: よし。行くぞ、刑事
巌徒: 了解!

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 一柳万才、狩魔豪、巌徒海慈。黒幕3人が実は同年代だったと知って、若い頃の妄想が最近流行ってます。ワタシの中で。
 確かに悪いコトもしてきたけれど、本当の真っ黒犯罪者や白にされそうな犯罪者も有罪にしてきたのかと思えば、 それなりに社会に貢献はしてたのかな、と。ゲーム上弁護士が主役なので検事側が悪どく描かれるのは仕方ないですよね。
ガントさんなんかは捜査官時代は現場主義のエリートで、それでも年を重ねると共に権力を追うようになってしまった、とか 考えるとドラマティックだなー、と。今回の話は20代半ばをイメージして書いてみました。最初に一緒に 事件、って設定です。徐々に親しくなり(ガントさんが一方的に)、【豪くん】呼びする様になるまではもう少しかかる予定。 もしも、悪い方向に進んでいなければ、なるほどくん&御剣、の様な良いコンビになれたかもしれないと思います。
 ガントの部下の【徹っちゃん】は、若かりし頃の馬堂刑事ですw