後に全戦国を震撼させる事になる、前田夫婦・全国食材探しの旅。 究極の食材を探すまつと、おなかを空かせた利家が訪れたのは伊達政宗の元だった。政宗の右腕で、野菜作りの名人とその世界では名の知れた片倉小十朗の育てた野菜が2人の目的だった。 多少手荒い歓迎を受けた夫婦だが、何とか試練をクリアして小十朗のお手製野菜をゲット。その際、すっかり政宗に気に入られた前田夫婦は、旅の疲れを癒す為にしばしの間伊達軍の元に逗留する事になったのである。 その日、利家と政宗は手合わせをする為に外へ出ていた。心置きなく暴れられる様に、2人だけで出てきたのである。もちろん、まつにも小十朗にも内密に。 政宗が1人で修練をする時に使うというその場所へ来ると、2人は対峙する。 「この間は2対2だったからな。ここで改めてサシ勝負と行こうぜ。you got it ?」 「承知した!独眼竜の噂は西の方まで聞こえているが、噂通りの腕なのか某が試させてもらう!」 ぶんっ と鈍い音を立てながら槍をくるりと回す。普段から律儀で温厚だと言われている利家だが、若い頃は血気盛んな傾奇者で、その性分は普段はナリを潜めているものの、いざ、心揺さぶる武人を目の前にすると押さえが効かなくなってしまう。 夕べは美味しい野菜料理を心ゆくまで味わったので体力・気力とも充実している。 「はっ!」 身の丈より遥かに長い槍を軽々と回すと、利家は腰を落として構えを取った。 「只でも槍ってのはメンドウな獲物だが、あのsizeをこうも簡単に振り回すとはなァ…ま、相手に取って不足は無ェ!いくぜっ!party time!!」 ジャキッ と重い音と共に政宗は腰の全ての刀を抜き放った。それは防御を捨て、攻撃に全力を注ぐ事を意味する。 「へへっ、始めから全力か、独眼竜!そうでなくては!」 共に駆けながら第一撃を放った。 形容し難い金属音が辺りに響く。 同時に、常人ならばふっ飛ばされる程の衝撃が互いの腕に走り、瞬く間の内に全身を巡った。二人は一瞬苦悶の表情を浮かべたが、すぐ様第二撃を放つべく互いの動向を伺う。 先に動いたのは利家だった。 「そりゃそりゃそりゃそりゃぁーーっっ!!」 気合の声を上げながら、長槍を繰り出してくる。払ったかと思えば振り上げ、回したのかと思えば柄の方で突く。しかも、その一撃一撃は速い上に重く、反撃の隙を与えない。 「でやぁぁっっ!!」 「ぐあぁっ!」 元より防御に向かない6爪流、渾身の一撃を受け止めきれずに、政宗の体は宙を舞った。何とか着地したものの、全身を打たれたかの様な痛みが走る。 「へっ。アンタら夫婦のバカップルぶりはこっちにまで聞こえているが、腑抜けてはないみたいだな。安心したぜ。」 ぺろり と乾いた唇を舐めると政宗は刀を持ち直し、利家に向かって行った。 「オラオラオラオラオラー!!」 「むっ。」 持ち前の素早さで次から次へと突きを浴びせる。突きといっても一突きで三つの刃が襲うのだから、今度は利家が押され出した。槍で刃を防ぎ、体を反らして別の刃をかわす。が、三つの刃をかわしたかと思えば、すぐ様もう三つの刃が目の前に迫ってくるのだ。 徐々に後ずさりながらも、巧にみ攻撃をかわし続ける利家。 このまま引いては不利か。ならば! 「ほっ」 「!?」 利家は自ら後方に飛びのく。足が地に付くと同時に、後ろに回した槍を思い切り前方に振り上げた。 空気を割く音がしたその刹那、またもや鈍い金属音が辺りをつんざめく。 「ぐわぁっ!」 「うあぁっ!」 今度の衝撃には互いにこらえ切れなかった。それぞれの手から武器が離れ、地面に転がる。 何も手にしてない互いの姿を目にして、どちらからともなく笑った。 一通り笑いしきると、二人は歩み寄って握手を交わす。 「いやー、さすが独眼竜。噂にたがわぬ強さだ。」 「アンタこそ。まだ手が痺れてる…修練を積まなきゃ、あんな風に槍は扱えねぇ。悪かったな、バカップルだなんて言っちまって。」 「? ばかっぷる、とは何だ?」 「…っと、(過剰なまでに)仲睦まじいって事だよ。」 「なら、間違ってない。某とまつは、ばかっぷるだ!!」 「…本当にhappyな人だな、アンタ。」 そう言って政宗が楽しそうに笑うと、利家もつられて笑った。 ぐぅぅぅ〜ぅ♪ 笑い声に混じって利家の腹の声が響く。 「ハハ。腹が減ったか。just moment、チョット待ってな。」 そう言うと政宗は茂みの中に消えていく。しばらくして戻った政宗の手には野苺が握られていた。途端に目を輝かせる利家。 「これでちったぁ我慢してくれ。」 「んまーい!!ありがとう!独眼竜!!そなた、良いヤツだな〜」 「Of course ! I am. 何だよ、今頃気づいたのか?」 嬉しそうに、満面の笑みを浮かべながら野苺をほお張る利家。 そんな利家を穏やかな顔で眺める政宗。その視線に気がつき、利家は苺を2,3粒手のひらに乗せると、政宗に差し出した。 「独眼竜も食べるか?」 「・・・アンタって、面白いな。」 「そうなのか?」 「何か、ただ居るだけで場が和むって言うか、一緒にいると落ち着くと言うか。」 「・・・独眼竜は今、落ち着いているのか?」 「ああ、relax してる。何か気分が良いよ。アンタのおかげだ。」 「そうか。某は特に何かしてるつもりはないが、独眼竜の気分が良いのなら某も嬉しい。」 「! ・・・・・・sorry. 前言撤回だ。気分は良いが、少し緊張してきた。」 「え?」 「コレ、頂くぜ。」 「あ。」 利家の手首を掴むと、少し上に持ち上げる。そして手のひらに乗ったままの苺を、赤い舌でぺろりと舐め取った。 唖然としたままの利家。拳一つぶんの間の先に、政宗の端正な顔が見える。その瞳がこちらに向けられた。 「独眼竜・・・」 そなたも腹が減ったのだな。 「帰ろうか、独眼竜。」 「そうだな、あまり長い事抜けたら、お互い後が怖そうだし。それに、アンタの腹も我慢出来無さそうだしな。」 「帰ったらまつに飯を作ってもらおう。」 「I agree. 賛成だ。」 そうして2人は馬に乗ると家路に向かう。 「なあ、利家。また勝負しようぜ。」 「ああ!今度は某の家へ来てくれ!歓迎する。」 「Thank you. 嬉しいねぇ。」 「約束だぞ!」 「I promise. 必ず行く。」 再びまみえる約束を交わし、2人は競う様に馬を走らせた。 終わりw |
あとがき >そなたも腹が減ったのだな。 違います。 いや、ある意味、飢えを覚えたかもしれませんが。・・・利家はこの位の勘違い、朝飯前です!! 伊達利〜w 好きです。つか、利家は良いお父さん・お兄さんみたいなイメージが強いので、年下キャラ(見た目が)なら誰でも・・・…とまではいかないまでも、大抵のキャラとの絡みが似合うと思う今日この頃。 プラス、まつストーリーのVS伊達軍の会話が・・・ww 『気に入った!!』と宣言しちゃいましたからね、政宗。その上利家は『独眼竜』って呼び捨てだし♪ そんな訳で伊達利も大好物です!!・・・カプ的にはマイナーかもしれませんが。 今回は前半は只の勝負になってしまいましたが、後半ちょっとソレっぽくしてみました。 同時進行で慶利、チカ犬やってるので、なるべくシチェーションがかぶらないようにしてみました。でも戦闘シーンを文章で表現するって難しい・・・もちろん、絵にするのも難しいです。ソレっぽく見えたでしょうか。 伊達と利家は史実でも多少関係があるのもミソですねー。 秀吉政権時代に、戦に遅刻した政宗が秀吉の怒りを買って、切腹させられそうになった時、千利休にお茶の作法を教えてもらえるように(つまりご機嫌伺い?)、利家にお願いしてもらった、みたいな事があったらしいです。 可愛いじゃないですか!!頼られてるじゃないですか!! 只でも仲間はいるけど肉親的キャラがまわりにいない(小十朗は主従の一線を越えられない感じが)政宗と、父性溢れる利家はお似合いだと思うんですよね〜♪ ちなみに、一般的に刀と槍とでは槍の方が有利です。刀で槍と対等にやりあうには、階級にして3段位の差が必要とか。槍はリーチが長いのが魅力ですが、力がないと小回りが効きません。刀の方が小回り効きやすそうですよねー。切り返しとか。 060829 |